大人からの将棋上達ブログ

成人後に将棋を本格的に始め、24で六段になった将棋指しの

【次の一手|プロの実戦】問題71-矢倉の中盤戦

プロ棋士の実戦棋譜から、これは凄い!と感じた一手や、覚えておくと棋力向上に繋がりそうな手筋などを、「次の一手」の問題形式で紹介します。問題を解いて棋力アップを目指してください。

今回は以下の棋戦からの紹介です。

▲豊島将之八段 △中村太地王座 五万石藤まつり第25回将棋まつり より

【問題図:▽6三銀 まで】

いま後手が▽6三銀とあがって、馬取りに銀を当てたところです。馬取りに対して先手はどう対応するのが良いでしょうか。

 (正解は下にスクロールするとあります)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            

正解は▲同馬です

【正解図:▲同馬 まで】

問題図では方針をどうするか悩みどころの局面です。正解手▲同馬に代えて▲2七馬と引き、陣形差を主張してじっくり戦う方針も考えらえるところです。問題図から▲2七馬の場合の進行例を示すと、▽5四歩▲3七馬▽2五角成という進行が予想されます。(参考図1)

【参考図1:▽2五角成 まで】

参考図1の局面は先手も悪くはありませんが、後手にも銀桂交換の駒得という主張点があります。後手陣をどう攻略するかが掴みづらく、互角に近い形勢だと思います。さらに優位を拡大できないか、他の変化も考えてみたいところです。

正解手の▲同馬は駒損をしますが、後手の金銀をバラバラにして、一気に攻略するのが狙いです。▲同馬以下は、▽同金▲2二銀▽3二飛▲3三銀成▽同飛▲4四金と進みます。(図1)

【図1:▲4四金 まで】

馬を切った後に▲2二銀と打つのが継続手です。図1まで進み、後手陣を一気に攻略することに成功しました。図1の最終手▲4四金が厳しく、▽3一飛は▲3二歩~▲3三歩があり、飛車を取ることができます。(飛車を逃げるのは▲3四金と銀を取ることができます)

自玉がしっかりと囲えていて堅陣な局面では、正解手順のような強襲が成立しないかを、まずは考えてみたいところです。図1の局面は先手の攻めが切れない上に、自玉も堅陣であるため、先手が優勢な局面です。

いかがでしたでしょうか?問題の感想などございましたら、コメントをいただければ幸いです。

もしよければ、以下の問題にもチャレンジしてみてください! 

 

【次の一手|プロの実戦】問題70-中飛車の終盤戦

プロ棋士の実戦棋譜から、これは凄い!と感じた一手や、覚えておくと棋力向上に繋がりそうな手筋などを、「次の一手」の問題形式で紹介します。問題を解いて棋力アップを目指してください。

今回は以下の棋戦からの紹介です。

▲久保利明王将 △丸山忠久九段 第31期竜王戦1組出場者決定戦 より

【問題図:▽8二馬 まで】

いま後手が▽8二馬としたところです。局面は先手の駒得で、玉の堅さでも勝っている先手が優勢な局面です。まずは玉の小びんを狙っている馬の効きを防ぎたいところですが、どのように防ぐのが良いでしょうか。

 (正解は下にスクロールするとあります)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                

正解は▲7三歩です

【正解図:▲7三歩 まで】

正解は▲7三歩です。これは"焦点の歩"と呼ばれる将棋の手筋です。複数の駒の効きが重なっていたり、交差している場所に打つ歩のことで、相手駒の働きを弱める好手になりやすい手筋です。特に、今回のように大駒の効きが交差している場所に打つ手は、どちらか片方の効きを止めることができるため、非常に有効です。

例えば正解図以下、▽同飛取るのは馬の効きが消えるため、▲4五桂と桂を取ることができます。(参考図1)

【参考図1:▲4五桂 まで】

馬の効きが止まっていなければ▽4七歩成がありましたが、参考図1ではそれが無くなっているため、問題ありません。

また正解図以下、▽同馬と取る手には、▲8三歩成が好手です。(参考図2)

【参考図2:▲8三歩成 まで】

7三に馬が移動したことで、今度は4三にいた飛車の効きが止まっています。▲8三歩成を▽同飛と取ることができなくなっています。参考図2以下は▽同馬と取るしかありませんが、こちらも後手の馬筋を自玉から逸らすことに成功します。以下は自玉への脅威が無くなったため、▲5四飛と飛車を活用しておくくらいで先手が大優勢の局面でしょう。

 

いかがでしたでしょうか?問題の感想などございましたら、コメントをいただければ幸いです。

もしよければ、以下の問題にもチャレンジしてみてください!

【次の一手|プロの実戦】問題69-横歩取りの終盤戦

プロ棋士の実戦棋譜から、これは凄い!と感じた一手や、覚えておくと棋力向上に繋がりそうな手筋などを、「次の一手」の問題形式で紹介します。問題を解いて棋力アップを目指してください。

今回は以下の棋戦からの紹介です。

▲三浦弘行九段 △山崎隆之八段 第31期竜王戦2組ランキング戦 より

【問題図:▽2七龍 まで】

いま後手が▽2七飛成として龍を作ったところです。手番を握った先手は寄せを考えたいところですが、どう攻めれば良いでしょうか。

 (正解は下にスクロールするとあります)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正解は▲3三銀です

【正解図:▲3三銀 まで】

▲3三銀と打つのが正解です。これに対して▽同金は ▲5三角▽3二玉▲2八香という手順があります。(参考図1)

【参考図1:▲2八香 まで】

▲2八香に対して▽3六龍と龍が逃げるのは▲3三桂成▽同玉▲2三金で後手玉が詰んでしまいます。参考図1の▲2八香が厳しく、この変化は先手が優勢です。 

実戦は正解図以下、▽5一玉▲5三桂成▽5二金▲同成桂▽同飛▲5三香と進みます。(図1)

              

【図1:▲5三香 まで】

図1の最終手▲5三香が厳しい一手です。図1以下▽同飛とするのは、▲4二銀▽6二玉▲5三銀成▽同玉▲5一飛で後手玉が寄っています。(参考図2)

【参考図2:▲5一飛 まで】

参考図2から5二香と合駒をするのは▲4二角▽6二玉▲8一飛成で後手玉の受けがなくなります。また▽6四玉は▲5三角以下の即詰みです。

実戦は図1以下▽3三金と取りました。これは3三の銀を取ることで、参考図2と同じように進んだ時に、4四への脱出路を作るのが狙いです。しかし▽3三金以下、▲5二香成▽同玉▲8二飛が好手順です。(図2)

              

【図2:▲8二飛 まで】

図2以下、▽6二香の合い駒には▲3一角が挟撃の攻めです。(参考図3)

【参考図3:▲3一角 まで】

参考図3以下は▽5三銀と受けても▲6一銀と打てば寄りです。

ちなみに図2から▲3三桂成も自然に見えますが実は疑問手で、▽3六龍という手があります。先手の2五にいた桂が居なくなることで、後手の1四の角が先手玉を間接的に睨んできます。進行の一例は図2以下▲3三桂成▽3六龍▲4二金▽5三玉▲4三金▽6四玉▲8四飛成▽7四桂▲5三角▽6五玉という手順です。(参考図4)

【参考図4:▽6五玉 まで】

参考図4の局面は後手玉が危なそうですが、4段目の王手(▲5六銀など)はすべて▽同龍と取られます。3六の龍が動くと1四の角の効きで逆王手になり、先手の攻めがうまくいきません。よって先手の2五の桂は動かさず、後手の角を遮ぎる役割与えておいたほうが堅実でしょう。

いかがでしたでしょうか?問題の感想などございましたら、コメントをいただければ幸いです。

もしよければ、以下の問題にもチャレンジしてみてください! 

【次の一手|プロの実戦】問題68-相掛かりの中盤戦

プロ棋士の実戦棋譜から、これは凄い!と感じた一手や、覚えておくと棋力向上に繋がりそうな手筋などを、「次の一手」の問題形式で紹介します。問題を解いて棋力アップを目指してください。

今回は以下の棋戦からの紹介です。

▲佐藤康光九段 △永瀬拓矢七段 第31期竜王戦1組出場者決定戦 より

【問題図:▲2三歩 まで】

いま先手が▲2三歩と打った局面です。先手の狙いは▽同銀と取らせて▲5五角と打つ狙いです。これに対して後手はどう対応するのが良いでしょうか。

 (正解は下にスクロールするとあります)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正解は▽同銀です

【正解図:▽同銀 まで】

問題図の▲2三歩は▽同銀と取らせて▲5五角を打つ狙いでしたが、その狙い通りの手順にあえて踏み込んでいくのが好手です。正解図以下は、▲5五角▽6四角▲1一角成▽3三桂▲5六銀▽7三桂と進みます。(図1)

【図1:▽7三桂 まで】

図1まで進んでみると、先手は馬を作ったものの、その馬はほぼ行き場がなく封じられてしまった格好です。むしろ後手の6四の角のほうが働いていそうです。また先手は歩切れであるため、後手からは端攻めの楽しみがあります。さらに最終手▽7三桂は、次に▽8一飛として馬を取ってしまう狙いで、これを受けるには▲2二香と打つしかありません。

実戦は図1以下、▲2二香▽8六歩▲2一香成▽8七歩成▲同銀▽9七歩成▲同香▽同角成▲8八歩▽8一飛と進みます(図2)

【図2:▽8一飛 まで】

実戦でも馬を守るために▲2二香と打ちました。後手は狙い通り端攻めをして、香車を取り返すことに成功します。そして図2の最終手▽8一飛が優先を決定付ける1手で、先手の▲2二とに▽1一飛と馬を取る手を用意しています。図2の局面は、はっきりと後手が優勢な局面です。

 

ちなみに問題図から▽3三銀と逃げる手には、▲3四銀という追撃がありました。(参考図1)

【参考図1:▲3四銀 まで】

参考図1から▽同銀であれば、▲2二歩成▽同金▲5五角という狙いがあります。激しい攻め合いで難解ですが、後手には9五銀という捌くのに課題がある駒が残っているため、参考図1のような激しい攻め合いの順にすると、盤上に残りやすいため避けたいところです。正解手順のように比較的穏やかな展開を選び、後手の攻め駒が先手の守り駒と交換になる手を間に合わせていきたいところです。

また、問題図 から▽同金と取る手も同様に▲3四銀~▲5五角があるため、正解手の▽同銀が勝ります。

 

いかがでしたでしょうか?問題の感想などございましたら、コメントをいただければ幸いです。

もしよければ、以下の問題にもチャレンジしてみてください!

【序盤研究】横歩取り4五角戦法の対策

当ブログは序盤研究についての記事を全く書いてきませんでしたが、ようやく初の序盤についての記事です。タイトルの通り、横歩取り4五角戦法の対策について整理をした記事になっています。

先手番で横歩取りを指してみたいと思っていても、これから取り上げる4五角戦法に代表されるような急戦対策を準備しないと、研究であっという間に負けてしまいます。しかも、4五角戦法は乱戦の定跡であるにも関わらず、後手が途中で変化できそうな局面が非常に多いため、すべての変化に対して網羅的に準備をするのは大変です。

当記事は4五角戦法のすべての変化手順において、最善の対応を示すことを目的とはしていません。乱戦を目指した後手の戦略に対し、なるべく乱戦を避けて戦うことを基本指針に位置づけて、相手の研究にハマらないよう自分のペースで戦えるようになることが目的です。各変化をガチガチに暗記するというよりは、主要変化における指針の理解と、手の流れをイメージできるようになれば十分だと思います。

 

この記事は、こんな人に向いていると思います。

  • 横歩取りを指してみたいが、4五角戦法が怖くて指せない!
  • 棋書を買ってまで、定跡の勉強をガチガチにしたくない!
  • 後手の研究にハメられにくい、4五角戦法対策が知りたい!

4五角戦法と遭遇したら真正面から叩き潰したい!! というよりは、微差でも良いのでリードを確実に確保し、負けにくい対策がほしいという人向けです。

 

時間と意欲のある方は、棋書にて対策の体系的な習得を!

もし定跡の勉強をする時間と意欲のある方は、横歩取りの乱戦対策の棋書を1冊購読されることをお勧めします。僕のお勧めは、飯島栄治さんの【横歩取り 超急戦のすべて】です。横歩取りの乱戦が広く網羅されているだけでなく、各章に「次の一手形式」の問題があるのが特徴です。当ブログの次の一手問題を解かれている方には、相性の良い棋書ではないかと思います。

 

目次:対横歩取り4五角戦法

1.▽2三歩を打たずに▽6七角成の変化

【初手から】

▲7六歩▽3四歩▲2六歩▽8四歩▲2五歩▽8五歩▲7八金▽3二金▲2四歩▽同歩▲同飛▽8六歩▲同歩▽同飛▲3四飛▽8八角成▲同銀▽2八歩▲同銀▽4五角▲2四飛▽6七角成 (図1)

【図1:▽6七角成 まで】

図1の最終手▽6七角成のところ、一般的な定跡手は▽2三歩ですが、▽2三歩を打たずに▽6七角成とされた時の対処手順を、念のため整理しておきましょう。

図1以下は▲同金▽8八飛成▲2一飛成▽8九龍▲6九歩▽5五桂▲6六金(1)▽4七桂成▲5六角(2) が進行例です(図2) 

※太字の手は図面以下で解説

【図2:▲5六角 まで】

(1):▲6六金に代えて▲6八金は▽6七銀、▲5六金は▽6七桂成と進み、受けきりが難しい局面になってしまいます。

(2):▽4七桂成と進んで後手好調に見えますが、最終手▲5六角が用意の一手です。8九の龍と4七の成桂の両取りとなっており、この手で後手の攻めが止まっています。以下は▽8七龍と▽9九龍の応手が考えられますが、▽8七龍は▲2四角▽6二玉▲4七角、▽9九龍は▲4七角▽4四香▲4五歩▽同香▲4六歩▽同香▲2四角が進行例です。いずれも▲2四角が後手の居玉を咎めた切り替えしです。

▽2三歩を打たずに▽6七角成の変化 【まとめ】
  • ▽5五桂と打たれたら▲6六金と逃げる
  • ▲5六角と打って龍と成桂の両取りをかける
  • ▲2四角が居玉を咎めた用意の切り返し

このあたりの対応を事前に認識しておけば、実戦で指されても大丈夫でしょう。

 

2.▽2三歩に▲7七角の変化

【初手から】

▲7六歩▽3四歩▲2六歩▽8四歩▲2五歩▽8五歩▲7八金▽3二金▲2四歩▽同歩▲同飛▽8六歩▲同歩▽同飛▲3四飛▽8八角成▲同銀▽2八歩▲同銀▽4五角▲2四飛▽2三歩▲7七角▽8八飛成▲同角▽2四歩▲1一角成 (図3)

                                                                                                                                           

【図3:▲1一角成 まで】

ここからは横歩取り4五角における、本来の定跡手順を整理していきます。図3はいま先手が▲1一角成としたところです。ここから後手の指し手で有力なのは、

  • 3三桂
  • 8七銀
  • 2五飛

の3つがよく遭遇する変化です。▽2五飛はやや珍しく、▽3三桂と▽8七銀の2つが体感的には90%以上を占めるのではないでしょうか。この3つの変化について、対応の方針を整理しておきましょう。

 

2-1.▲1一角成に▽3三桂の変化

図3より▽3三桂▲8八飛 (図4)

                                                                                                                                                                        

【図4:▲8八飛 まで】

▽3三桂に対して、有名な定跡手として▲3六香を知っている方は多いのではないでしょうか。しかし▲3六香は有名であるがため、後手の研究ターゲットにされやすいのが怖いところ。▲3六香は後手が途中で変化をしやすい将棋です。これは個人的な意見ですが、半端な予習で▲3六香の変化を選ぶのは危険だと思います。そこで推奨する手が▲8八飛と打つ手です。

▲8八飛は一直線の攻め合いで相手を倒すというよりは、乱戦をなるべく避けて局面を落ち着かせることを目指した一手です。後手の歩切れをついた▲8一飛成の狙いは当然あるものの、打った飛車の主な役割は、効きを生かして自陣の隙を無くすことです。▲3六香よりはマイナーで認知度が低い対応ですが、実は有力な定跡手の1つです。

この手に対して後手の想定される応手としては、

  • 6七角成
  • 2五飛
  • 1八銀

という3つの変化です。以下、順番に整理します。

 

2-1-1.▲8八飛に▽6七角成の変化

図4より、▽6七角成▲同金▽7九飛▲6九歩▽8七歩▲6八飛(1)▽8九飛成▲6六角(2)▽7九銀▲5八飛▽8八歩成▲3三角成▽同金▲同馬▽4二銀▲2三馬(3)▽5五桂▲4八玉(4)▽6七桂成▲同馬▽9九龍▲7五桂  が進行例です。(図5) 

※太字は図面以下で解説。

【図5:▲7五桂 まで】

(1):▲同飛には▽7八銀があります。この変化も先手が悪いわけではありませんが、当記事の乱戦を避ける方針とは異なるため、検討対象外とします。

(2):この手は覚えておいてください。自陣を受けながら▲3三角成を狙った、この定跡手順における最重要の一手です。

(3):馬の逃げ場所はたくさんあるところですが、推奨は▲2三馬です。推奨の理由は3点あります。①次に▲4一金の狙いがあるところ ②6七の金に紐をつけているところ ③間接的に8九の龍に狙いをつけているところ

(4):この変化では1度は指す必要のある一手です。一手指すだけで一気に自玉の安定度が増します。指すタイミングはここがベストで、ここで指せるようにするために▲2三馬で6七の金に紐をつけています。

図5の局面の形勢は互角に近い局面だと思いますが、自玉がすぐに寄せられる心配はなくなりました。開戦早々に生きるか死ぬかを味わうような乱戦を避けたい、という方針の狙い通りの展開です。局面自体も最終手▲7五桂の対応が悩ましく、僕は先手を持って指してみたいと思う局面です。

 

2-1-2.▲8八飛に▽2五飛の変化

図4より、▽2五飛▲7七金▽7九銀▲7八飛▽2七角成▲同銀▽同飛成▲3九金 が進行例です。(図6)

※太字は図面以下で解説。

【図6:▲3九金 まで】

途中の▲7七金と▲3九金が用意の受けで、図6の局面で後手の攻めは無理気味です。攻め続けるとしたら▽6八銀打ですが、▲同飛▽同銀成▲同玉と進んだ局面は後手の持ち駒が飛車1枚しかなく、攻めの継続手が難しい局面です。

 

2-1-3.▲8八飛に▽1八銀の変化

図4より、▽1八銀▲3九金(1)▽2九銀成▲同金▽6六桂▲6八金(2)▽7九飛▲6九銀▽7六飛成▲8一飛成▽6七馬▲7七歩▽8五龍(3)▲同龍▽同馬▲6七歩▽8七飛▲2一飛 が進行例です。 (図7)

※太字は図面以下で解説。

【図7:▲2一飛 まで】

(1):代えて▲同香は▽同角成で後手優勢です。▲3九金が唯一の受けです。

(2):▲同歩は▽7八角成▲同飛▽8七飛があります。この進行は難解ですが、後手も十分戦える変化ですし、当記事の乱戦を避ける方針から外れるため研究対象外とします。

(3):代えて▽6八馬▲同玉は、後手の攻めが切れ模様です。

この▽1八銀というのは知っていないと浮かばなさそうな手です。しかし、この戦型のスペシャリストによると、これを最善手と評価している人も多いようで、私も実戦で何度か指された経験があります。

▽1八銀には▲3九金が唯一の受けです。後手が攻めを続けるとすれば、図7までの進行例のような変化になるのではないでしょうか。先手の対応は一例ですが、この変化では途中で攻め合いに転じる必要がありそうです。途中▲6七歩を打った局面で後手の攻めが一旦止まるため、そこで反撃に移るのが良いのではないでしょうか。最終手▲2一飛と打った局面は、次の▲3三馬が厳しく、先手が優勢の局面です。 

▲1一角成に▽3三桂の変化 【まとめ】
  • ▽3三桂には8八飛じっくりとした戦いを目指す。基本は相手の猛攻をケアしつつ乱戦を回避する。
  • ▽6七角成には▲6六角で、▽2五飛には▲7七金で長い戦いを目指す。
  • ▽1八銀には▲3九金が絶対手。機を見て受けから攻めにギアチェンジする。

 

2-2.▲1一角成に▽8七銀の変化

図3より、▽8七銀▲7七馬 (図8)

                                                                                                                                           

【図8:▲7七馬 まで】

▽3三桂と並び、▽8七銀は頻出の変化です。▽8七銀に対する有力手は▲7七馬以外にも▲7九金や▲同金など多数あり、実はどれも有力です。その中でも当記事が推奨するのは▲7七馬です。理由は全体指針である乱戦を避ける将棋を目指しやすいためです。図8での後手の有力手としては、

  • ▽7六銀不成
  • ▽7八銀成

の2つが考えられます。以下、順番に整理をします。

 

2-2-1.▲7七馬に▽7六銀不成の変化

図8より、▽7六銀不成(1)▲6八馬▽8八歩▲4六飛(2) (図9)

※太字は図面以下で解説。

                                                                                                                                   

【図9:▲4六飛 まで】

(1):▲同馬とするのは▽2六飛があり、後手良しです。

(2):▲4六飛が推奨手です。この手を推奨している理由としては、後手の変化が▽8九歩成か▽5四角の2択にほぼ限られており、準備がしやすいところです。

 

2-2-1ー1.▲4六飛に▽8九歩成の変化

図9より、▽8九歩成▲4五飛▽9九と▲5八玉▽8九飛▲7五飛▽7四香▲5五飛▽4二金▲7五歩が進行の一例です。(図10)

【図10:▲7五歩 まで】

▽8九歩成の変化では、先手が角を取るため駒得となります。駒得を生かせるように、戦いを長引かせることを指針とした差し回しを心がけたいところです。

最終手▲7五歩と打った局面では先手の駒得が大きく、ここまで進めば先手がはっきり優勢です。

 

2-2-1ー2.▲4六飛に▽5四角の変化

図9より、▽5四角▲8八金▽8七銀成▲7八金(1)▽同成銀▲同馬▽8七金▲7九馬(2)▽7四飛▲7六歩(3)▽同飛▲同飛▽同角▲6六飛▽9四角▲6三飛成▽6二金▲6六龍▽7六飛▲同龍▽同角▲6六飛▽5四角▲5六香▽7二角▲8八歩 が進行例です。(図11)

※太字部分は図面以下で解説

【図11:▲8八歩 まで】

(1):▲7八金は受けの手筋で、金を取られた時に同馬と取れるようにした手です。次に▲8八歩と打つ手を狙っているため、後手も▽同成銀とするよりありません。

(2):▽8七金に対する逃げ場所は、飛車の打ち込みを警戒して▲7九馬とします。▲7九馬は次に▲8八歩を狙っているので、後手は一手の余裕をあけさせないように攻める必要があります。

(3):▽7四飛には▲7六歩とします。飛車交換後に▲6六飛と角取りに打ち、先手は龍を作ります。代えて▲8八歩で金を取りに行くのは▽7八飛という強襲があるので注意が必要です。

後手が▽5四角と逃げた場合は、先手も▲8八金と手を戻してゆっくりと戦います。図11までの進行は後手が何とか手を作ろうとした場合の一例ですが、図11まで進んだ局面は金が取れる形であり、先手優勢だと思います。

 

2-2-2.▲7七馬に▽7八銀成の変化

図8より、▽7八銀成▲同馬▽6六金▲5八銀 が進行例です。(図12)

【図12:▲5八銀 まで】

▽7八銀成も自然なようですが、実は後手の攻め筋があまり多くありません。図12のように▲5八銀とガッチリ受けておけば、後手からの厳しい追撃の攻めはないと思います。

▲1一角成に▽8七銀の変化 【まとめ】
  • ▽8七銀に対する対応の中でも、落ち着いた戦いを目指しやすいのが▲7七馬
  • 4六飛と打つのが長期戦を目指した一手で、後手の乱戦狙いから外しやすい。
  • ▲4六飛に対して▽8九歩成でも▽5四角でも、先手は自陣の傷を消すことに専念して指せば形勢が良くなりやすい。

 

2-3.▲1一角成に▽2五飛の変化

図3より、▽2五飛▲3九金▽2七銀▲同銀▽同馬 (図13)

【図13:▽同馬 まで】

▽2五飛は先述の▽3三桂や▽8七銀に比べれば少し珍しいかもしれませんが、有力な変化です。図13の局面では、後手が2五に打った飛車の力を使って2筋の突破を狙っています。

ここで先手の応手には▲3六銀が見えますが、▲3六銀以下▽同馬▲同歩▽2八銀▲3八金▽2九銀不成▲3九金▽3八銀打▲4八金▽2八飛成(参考図1)と進んだ局面は、後手の重たい攻めが間に合ってきそうな局面です。

【参考図1:▽2八飛成 まで】

悪いわけではありませんが、後手にだけ攻められる展開は避けたいところです。そこで、図13では2一馬(図14)と攻め合います。当記事の指針からすれば穏やかにおさめる変化を目指したいところですが、この変化に限ってははじめから攻め合いを目指すのがわかりやすいと思います。

【図14:▲2一馬 まで】

図13以下、▽2八馬▲4九金(1)▽2九馬▲1一飛▽6二玉▲3一馬▽同金▲同飛成▽2八飛成▲5八銀▽3八銀▲5四桂(2) が進行例です(図15)

※太字個所は図面以下で解説。

【図15:▲5四桂 まで】

(1):▽2八馬に対しては、後手の攻めを遅らせるために▲4九金とします。

(2):最終手▲5四桂はポイントの一手で、先に▲4二龍▽5二桂としてから▲5四桂だと、取ってくれない可能性があります。

図15以下は、▽同歩▲4二龍▽5二桂▲5三銀▽7二玉▲8六香 が進行例です。(図16)

【図16:▲8六香 まで】

最終手▲8六香と打ったところは、先手が一手勝ち模様です。後手が粘るなら▽7四角のような手が考えられますが、▲8四歩(参考図2)と攻め駒を確実に足していき、先手の攻めは続くでしょう。

【参考図2:▲8四歩 まで】

▲1一角成に▽2五飛の変化 【まとめ】
  • 2五飛は▽3三桂や▽8七銀に比べればマイナーだが要警戒の変化。
  • ▲3六銀の飛車と馬の両取りは手拍子で指すと後手の猛攻に遭う可能性があるので打つ時は注意。
  • 2五飛の変化は攻め合いを目指すのがわかりやすい勝ち方。後手からの攻めは受けきりではなく、受け流す感覚で対応する。

 

以上、横歩取り4五角戦法の主要変化である、▽3三桂、▽8七銀、▽2五飛について見ていきました。サラっと整理するつもりだったのですが、やりだすとなかなかのボリュームになってしまいました。。。整理していて感じたことですが、当記事ではかなり変化を絞ったにも関わらず、それでも後手に選択肢が多い4五角戦法に対して、先手が記憶力だけで勝負するのは圧倒的に不利だと思いました。

記事冒頭でも述べましたが、対局前に4五角戦法と遭遇した時の指針や、手の流れをイメージしておくのが大切だと考えています。それが出来ていれば、いざ実戦で遭遇した時に対応手順を完全に記憶していなくても、それに近いものを導き出せると思います。

繰り返しになりますが、これは決定版の対策ではなく、あくまで一例の対策に過ぎないことはご了承ください。当記事で取り上げた4五角戦法対策の考え方が、もしご自身の棋風や好みにあっていると感じるような考え方であれば、ぜひ実戦で試していただければ幸いです。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

【次の一手|プロの実戦】問題67-中飛車の終盤戦

プロ棋士の実戦棋譜から、これは凄い!と感じた一手や、覚えておくと棋力向上に繋がりそうな手筋などを、「次の一手」の問題形式で紹介します。問題を解いて棋力アップを目指してください。

今回は以下の棋戦からの紹介です。

▲里見香奈女流王位 △渡部 愛女流二段 第29期女流王位戦五番勝負 第1局 より

          

【問題図:▽5六桂打 まで】

いま後手が▽5六桂打と桂を打ち、角と金の両取りをかけてきました。この両取りに対してどのように対応するのが良いでしょうか。

 (正解は下にスクロールするとあります)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正解は▲4七金左です

【正解図:▲4七金左 まで】

ここでは自玉に近い金を逃げる▲4七金左とする手が正解です。代えて問題図から角も金も逃げず▲4七香と攻め合うのは、”両取り逃げるべからず” という格言に当てはめた一手で考えられそうな対応です。ですが、以下▽4八桂成▲同金▽2九金▲1七玉▽6九龍という攻めが強烈で、攻め合い負けをしてしまいます。(参考図1)

【参考図1:▽6九龍 まで】

参考図1は次に角を取って▽3九角を狙われています。角を逃げても、▽6五龍と銀を取られる手があり、▽2八銀からの攻めを狙われてしまうと、先手玉が持たない格好です。

また問題図から▲5七角と逃げるのも、▽4八桂成▲同角▽2九金の攻めがあります。

正解手の▲4七金左は、▽6八桂成と角をタダで取られてしまいますが、その瞬間は自玉が非常にしっかりした形が保てています。そこで満を持して▲4六香と攻め合います。(図1)

【図1:▲4六香 まで】

▲4六香は後手からの▽4六歩を防ぎながら▲4三歩成を狙った攻防手です。図1の局面は先手が少し駒損をしていますが、先手玉のほうが玉の守りが安定している上に、次の▲4三歩成が確実で厳しい攻めで、先手が十分に戦える局面です。

実戦においては格言をただ当てはめれば良いわけではなく、読みとセットで用いなければならないことがわかる良い例だったのではないでしょうか。 

 

いかがでしたでしょうか?問題の感想などございましたら、コメントをいただければ幸いです。

もしよければ、以下の問題にもチャレンジしてみてください!

【次の一手】アクロバティックな切り返しの手順

昨日、とある将棋仲間と一緒にゴキゲン中飛車の超速の将棋について、検討会をしていた時のことです。そこでその将棋仲間が披露した、なかなかお目にかかれない、驚愕の手順がありました。折角なので、その手順を次の一手の問題形式で紹介させていただきます。

▲先手:私

▽後手:とある将棋仲間

 【問題図:▲3二金 まで】

図1は先手が▲3二金と打った局面です。飛車と銀の両取りの厳しい一手で、はっきりと先手良しに見えます。先手の角の効きを止める手もなさそうです。しかし、ここでは後手が形勢をひっくり返す驚愕の手順がありました。次の一手、お分かりになるでしょうか。

(正解手は下にスクロールするとあります)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正解手は、▽3九角 です。

【正解図:▽3九角 まで】

ここで後手はまさかの▽3九角と打ちました。なぜまさかなのかと言うと、▲3八飛と寄った局面は、後手の3一の飛車と3九の角の両取りになるからです。次に必ずどちらかが取れる形になっているため、将棋が終わっているように見えますが。。。

正解図以下、▲3八飛に▽6六桂!と打ちます。(図1)

【図1:▽6六桂 まで】

次に来たのはふんどしの桂打ち6六桂。これももちろん▲同歩と取れます。しかし図1以下、▲同歩▽同角成と進んだ局面で、ようやく手順の意味を理解しました。(図2)                  

【図2:▽6六同角成 まで】

図2の最終手、▽6六同角成までが狙いの手順でした。次に後手は▽6五馬と角を取る狙いですが、▲4三角成と逃げるのは▽3四銀が好手です。(図3)

【図3:▽3四銀 まで】

図3以下、もし▲同馬なら▽3二飛と進んだ局面が、詰めろ馬取りです。(図4)

【図4:▽3二飛 まで】

図4は次に▽8八金と打って玉を詰ます手と▽3四飛と馬を取る手を見せており、後手勝勢の局面になっています。

戻って図2では▲3一金と飛車を取るくらいでしょうが、後手も▽6五馬と角を取ります。(図5)

【図5:▽6五馬 まで】

図5は次に▽5六馬の王手飛車を狙っています。先手は▲6七銀と受けておくくらいでしょうが、以下▽4六歩と歩を取り込まれて第6図の局面です。

【第6図:▽4六歩 まで】

第6図の局面は先手が桂得しているものの、問題図で打った金が3一に取り残されており、全く捌きが見込めません。また後手からは▽4七銀や▽4九銀の攻めがあるのに対し、先手からは陣形の美濃囲いに対してすぐに迫る手がありません。第6図は後手が優勢な局面と言えるでしょう。どうしてこうなった。。。

 

どうやら問題図で打った▲3二金が悪手のようで、▲3二金に代えて1度▲4三角成としなければいけなかったみたいです。

【図7:▲4三角成 まで】

▲4三角成は、先述の▽3九角~▽6六角成と進んだ時に、▽6六角成が角取りにならないようにした手です。次に▲3二金を見せておけば、先手が十分に戦えた局面だったようです。

しかし▽3九角から▽6六桂、▽6六角成という手順・・・こんな手順が見えるものなんですね。本当に感動しました。

 

【次の一手|プロの実戦】問題66-角換わりの中盤戦

プロ棋士の実戦棋譜から、これは凄い!と感じた一手や、覚えておくと棋力向上に繋がりそうな手筋などを、「次の一手」の問題形式で紹介します。問題を解いて棋力アップを目指してください。

今回は以下の棋戦からの紹介です。

▲羽生善治竜王 △佐藤天彦名人 第76期名人戦七番勝負 第3局  より

【問題図:▽7五歩 まで】

いま後手が▽7五歩と、金取りに歩を打った局面です。先手はどう指すのが良いでしょうか。切り返しの好手順を考えてみてください。

 (正解は下にスクロールするとあります)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正解は▲7四とです

【正解図:▲7四と まで】

問題図から▲7七金と逃げるのも普通ですが、▽7六銀と打たれておくと先手はしばらく一方的に守勢に回らなければなりません。後手玉にも嫌味をつける手順を考えたいところです。

正解手の▲7四とはと金をタダで捨てる手で、勿体ないように感じますが、以下▽同飛▲8五金▽7一飛▲2六桂が狙いの手順です。(図1)

【図1:▲2六桂 まで】

図1の最終手▲2六桂が狙いの一手で、後手の3四の銀をタダで取ることができる桂打ちです。次に銀を取った形が後手玉の逃げ道を塞いでおり、と金を捨てた見返りは十分にあります。狙われていた7六の金を逃げながら飛車取りに当てて先手を取ることで、この桂打ちを実現することができました。

 

ちなみに、問題図から▲7七金▽7六銀▲2六桂とするのも考えられそうな変化ですが、▲2六桂以下、▽7七銀成▲同玉▽7三銀という手順があります。(参考図1)

【参考図1:▽7三銀 まで】

最終手▽7三銀は、後手の3四の銀を飛車で守りながら、と金を取った一手です。このように3四の銀を守られてしまうと、先手から後手玉に迫る手が難しくなります。先述の手順で▲8五金▽7一飛として、後手の飛車を四段目からズラしておけば、後手は3四の銀を守ることができなくなります。

 

いかがでしたでしょうか?問題の感想などございましたら、コメントをいただければ幸いです。

もしよければ、以下の問題にもチャレンジしてみてください! 

【次の一手|プロの実戦】問題65-四間飛車の終盤戦

プロ棋士の実戦棋譜から、これは凄い!と感じた一手や、覚えておくと棋力向上に繋がりそうな手筋などを、「次の一手」の問題形式で紹介します。問題を解いて棋力アップを目指してください。

今回は以下の棋戦からの紹介です。

▲谷川浩司棋聖 ▽阿部隆七段  第18回全日本プロトーナメント より

【問題図:▽6六馬 まで】

いま後手が▽6六馬と金を取ったところです。局面は先手の金損で、自陣は穴熊ですが桂が跳ねていることもあって薄く、このまま長引けば後手に形勢が傾きます。先手は手番を握ったこの瞬間に攻めたいところですが、どう攻めますか。

 (正解は下にスクロールするとあります)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正解は▲6一飛です

【正解図:▲6一飛 まで】

▲6一飛が2枚飛車の力を最大限に生かした攻めです。代えて▲2一龍などと平凡に桂を取るのは、▽6一歩▲同龍▽7一金打と埋められてしまいます。後手は駒得を生かして自陣に金銀を埋める手を狙っています。先手は金銀を埋めさせない攻め方を考えなければなりません。

▲6一飛は次に▲7一銀と▲6三飛成の2つの狙いを秘めた手です。その2つの狙いを同時に受けるには▽6二に駒を受けるしかないため、実戦では▽6二歩と受けました(代えて▽6二金打には▲同龍▽同金引▲8一金という攻めがあります)が、それに対して▲6四歩と打つ手が好手で、一歩千金の一手です。(図1)

【図1:▲6四歩 まで】

図1以下は▽同金▲6二龍▽同金▲同飛成と進んで、後手陣の囲いを崩壊させることに成功しました。(図2)

【図2:▲同飛成 まで】

図2以下は▽7二金▲7一銀▽9三玉▲6四龍▽5六馬▲9五歩(図3)と進みます。細い攻めに見えですが、途中の▲6四龍と金を取った手が、同時に6六の馬取りにもなっており、ここで手番を握れるのが大きいところです。▽5六馬と逃げる手に対して、"端玉には端歩”で▲9五歩と攻めます。

【図3:▲9五歩 まで】

図3以下は、▽同歩▲8二金▽同金▲9四歩▽同銀▲8二銀不成▽同玉▲6三金と進行します。(図4)

途中▲8二金は駒損の攻めですが、その後の▲9四歩が端をついた手を生かした攻めです。▽同銀と取らせることで後手の守りの銀を無力化させることに成功しました。図4の▲6三金と打った局面は、後手玉が寄り形です。

【図4:▲6三金 まで】

 

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【次の一手|プロの実戦】問題64-矢倉の中盤戦

プロ棋士の実戦棋譜から、これは凄い!と感じた一手や、覚えておくと棋力向上に繋がりそうな手筋などを、「次の一手」の問題形式で紹介します。問題を解いて棋力アップを目指してください。

今回は以下の棋戦からの紹介です。

▲高見泰地六段 △金井恒太六段 第3期叡王戦決勝七番勝負 第2局 より

【問題図:▽1四同歩 まで】

いま後手が▽1四同歩と取った局面です。後手陣をどこから攻略しますか。

 (正解は下にスクロールするとあります)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正解は▲2一銀です

【正解図:▲2一銀 まで】

正解は▲2一銀と打つ手です。一見▽3一金ですぐに打った銀が取られてしまいそうですが、以下▲1二歩▽2一金▲1一歩成▽同金▲1四香と進むと、先手の攻めが繋がります。(参考図1)

【参考図1:▲1四香 まで】

参考図1は先手の5七にいる角が働いてきて、先手も十分戦える局面です。

実戦は正解図より▽8八歩▲7七桂▽8九歩成▲6五歩▽5三角▲1二歩(図1)と進行しました。

【図1:▲1二歩 まで】

▽8八歩は手筋で、戦いが本格的にはじまるギリギリのタイミングでの利かしの一手です。もし▲同金なら▽3一金として受けにまわり、先手から駒をもらって反撃する方針で指すことになります。

実戦の▲7七桂は攻め合いを目指した一手です。▽8九歩成は▽8八歩と指した以上この一手ですが、図1の▲1二歩と打った局面は駒の損得は無いものの、先手陣に遊び駒がなく十分戦える局面だと思います。(後手は▽7二飛が働いていないのが気になるところです)

 

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終盤上達のための8つの格言と、定着のための勉強法

終盤戦を制するためには読みの正確さが必要です。ですが、それとは別に終盤を戦うにあたって大まかな指針となる「格言」があります。それら格言を覚えておくことで、終盤戦における急所の一手を導き出すことができる可能性が高まるでしょう。

例えば以下の第1図を例に、有名な格言を1つ紹介します。

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第1図で▲2三銀成▽同玉▲2一飛成と玉を上部に追いかけるのは筋の悪い攻めです。ここでは▲2一飛成▽同玉▲2三銀成と上から攻めていくのがセオリーです。(第2図)

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第2図では次の▲3三桂や▲2二金を見ており、後手玉は受け無しになっています。この手順の指針となってる格言は「玉は下段に落とせ」というものです。将棋には他にも「玉は包むように寄せよ」「終盤は駒の損得より速度」などの格言があり、これらを覚えておくと終盤戦における寄せの指針として役に立つことでしょう。

当記事では、覚えておくだけで終盤力を向上させる格言を8つ紹介します。終盤力に伸び悩んでいる級位者までの方は、格言を覚えて終盤力向上に役立ててください。有段者の方には既知の格言ばかりかもしれませんが、普段何気なく指している終盤の急所の手を、それぞれの格言の考え方と今一度結びつけることで、さらなる終盤力の定着に役立てていただければと思います。

 

格言1:玉は下段に落とせ

まずは記事の冒頭でも紹介した格言について、「玉は下段に落とせ」について、今一度整理をしましょう。

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第3図から駒得を重視して▲5三歩成▽同玉▲5一角成とするのは、玉を上部に逃がしているため筋が良くありません。

玉を下段に落としたほうが寄せやすい理由

ここでは▲5一角成▽同玉▲5三歩成と玉を下段に落として攻めるのがセオリーです。(第4図)

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第4図では後手が▽5二金と受けても▲5四桂と打てば攻めが続く形です。

将棋では玉は下段に落としたほうが寄せやすくなります。なぜなら、飛車と角を除いた駒はすべて、後ろに下がる力よりも前に進む力のほうが強いからです。特に、自分の攻め駒が小駒だけの攻めの場合は、相手玉をどうやって下段に追い込めるかを考えるのが良いでしょう。

 

格言2:玉は包むように寄せよ

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第5図では後手玉をどのように寄せれば良いでしょうか。まず▲2五銀と打つ人は居ないと思います。▲2五銀▽3三玉と進むのは、相手の玉を自ら大海原に逃してしまうことになります。このように王手をしながら相手玉を逃がしてしまう手順のことを"王手は追う手"といい、なるべく避けたい手順です。

▲4二角と打つ手はありそうですが、以下▽1三玉▲3一角成▽2二銀と打たれると、それ以上の寄せがありません。(第6図)

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詰みや受け無しにできない時は、王手をかけないのが基本原則

第5図や第6図がうまくいかなかった理由は、相手に詰みや必死がかからないのに王手をかけて攻めているからです。裏を返せば、"相手に詰みがないときは王手をかけない"ことが、終盤の基本原則と言えるでしょう。

第5図では▲2二角と打つのが正解です。(第7図)

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第7図は次に▲3三銀と▲2五銀という2つの詰みの狙いがあります。両方受けるには▽3三桂しかありませんが、それには▲3五銀▽同歩▲同金という詰み筋が発生しています。つまり、第7図で後手玉は必死なのです。

第7図と同じような考え方で▲2二銀と打つのはどうでしょうか。これには▽4四銀と受ける手があり、失敗します。(第8図)

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持ち駒が銀だと▲2五銀と打って詰んでいましたが、角だと詰みません。相手玉を仕留める駒としては角よりも銀を残したほうが良いケースが多いです。同じようでも注意が必要です。

小駒だけの攻めでは挟撃体制を狙う

"玉は包むように寄せよ"の格言からもう1つ例を紹介します。第9図から5手進むと必死がかかりますが、どう攻めればよいでしょうか。

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正解は▲4一銀▽同玉▲4二銀▽同銀▲2二桂成です。(第10図)

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第10図は次に▲5二金と▲3二金の2つの狙いがあり、後手は同時に受けることができません。つまり必死です。小駒だけの攻める時は、このように挟撃を狙ったほうが寄せが成功しやすいことが多いです。

 

格言3:終盤は駒の損得より速度

将棋において価値の高い駒を入手することは大切です。ですが、終盤が近づけば駒の価値は一変します。一手を争う終盤戦において相手玉の寄せが見えてきた場合、迷わず速度を優先すべきです。

まずは速度を先に考える

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第11図を例に見てみましょう。攻め駒の入手をはかる▲3二とも、悪い攻めではありませんが、ここではもっと早い攻めがあります。

ここでは▲5二と▽同金▲7一銀▽9二玉▲4一飛成とするのが正解です。(第12図)▲5二とで直接後手玉に迫るのが良いです。また途中▽同金ではなく▽7一金であれば▲6二ととさらに寄るのが好手です。

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第12図は、先手に金が入ると▲8二金で後手玉が詰みます。3二の金、5二の金の両方に狙いをつけており、次に確実に取れる形をしているため、後手には受けがありません。

駒損の攻めの頻出形

もう1つ例を見てみます。第13図は後手の矢倉を上下の龍と飛車の力で攻めているところです。

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いま▽3九馬とされて、先手の飛車取りになっています。ですが、ここで飛車を逃げるようでは後手玉への寄せが遅れてしまいます。

ここでは▲2四桂と打ち込むのがスピードのある寄せです。(第14図)

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これに対して▽2八馬と飛車を取るのはもちろん▲3二龍の一手詰めなので、後手は飛車を取ることができません。後手が頑張るなら▽同歩▲同歩▽同銀▲同飛▽2三歩と受ける粘り方です。(第15図)

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第15図までの手順は、矢倉で頻出の粘り方なので覚えておいて損はないでしょう。しかし、第15図の局面でも先手は攻めを緩めません。ここでは▲2三飛成以下後手玉に即詰みがあります。

第15図以下は、▲2三飛成▽同玉▲2四歩▽3三玉▲2三金▽同金▲同歩成▽同玉▲2四歩▽同玉▲2二龍▽2三歩▲2五金までの詰みです。(第16図)

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飛車は盤上で最も強い大切な駒ですが、第15図の局面は寄せの速さが優先されるケースです。終盤においては寄せの速さが駒の価値を上回ることを、この2例にて理解できたのではないでしょうか。

 

格言4:金なし将棋に受け手なし

金なし将棋に受け手なしとは、最も受けに役に立つ金がないと、簡単に受け無しに追い込まれてしまうことがあるという意味の格言です。

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第17図で例を見てみましょう。ここでは絶好の角打ちがあります。ちなみに▲7七角や▲8八角は▽6六歩で遮断されるため不正解です。

正解は▲1一角と、後手がタダで取れるところに打ち込む手です。仮に玉が逃げれば▲5五角成と龍を取ってしまう狙いです。そのため後手は▽同玉としますが、そこで▲2三香成とします。(第18図)

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第18図で後手の持ち駒に金があれば、▽2二金や▽1二金と打って受けきることができますが、持ち駒に金がないため後手玉には受けがありません。

後手の受け駒に金があるか確認しておくのが大切

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もう1つ例を見てみましょう。第19図では後手玉をどう寄せるのがよいでしょうか。

ここでは▲4四桂と打つのが正解です。以下は▽同歩▲4一角成▽同玉▲4三銀として、後手玉を上部から押さえるように攻めていきます。(第20図)

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第20図は▲5二金の狙いですが、角と桂が持ち駒の後手には受けがありません。例えば▽6一角と受けても、▲3二金▽同銀▲4二金で詰んでしまいます。これも後手の持ち駒に金があれば、▽4二金と受けて受かる形です。相手の持ち駒に金があるかどうかを押さえておくのは、終盤の寄せを考える上でとても大切なことです。

 

格言5:玉の早逃げ八手の得あり

強い人どうしの対局を観戦していると、終盤で王手をかけられていないのに、自ら一手をかけて玉をかわしている、そんな終盤戦を見かけることがあるのではないでしょうか。激しい攻め合いの終盤戦の中、先に玉を逃げておくことが好手になることは少なくありません。格言の八手というのはややオーバーな表現ですが、二手、三手の手数を稼げることは実際にあります。

必死をかけられそうな時は早逃げのタイミング

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例を見てみましょう。第21図は終盤の寄せ合いの形です。先手が攻めるなら▲3二とですが、それは詰めろになっていないため、▽3八銀と必死をかけられてしまいます。▽3八銀と打たれた形は有名な必死形であり、▲3六銀と受けても▽3九馬▲1八玉▽2九銀不成で詰まされてしまいます。

ここでは▲1七玉と逃げるのが好手です。(第22図)

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第22図で同じように▽3八銀なら、さらに▲2六玉と逃げるのが好手で、▽2七銀成▲3六玉と進めば先手玉はしばらく安泰になります。相手が必死をかけようとしているその直前は、早逃げの絶好のタイミングです。

終盤は駒損よりも玉の安泰を考える

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早逃げの例をもう1つ見てみましょう。第23図は見てわかる通り、次に▽5九龍から詰まされてしまう形です。持ち駒に歩があれば▲4九歩などで粘れますが、この場合は歩がありません。また▲6八銀や▲6八金左と受けるのも、▽5七歩成が追撃の攻めで、かえって攻めが厳しくなってしまいます。

ここでは▲7九玉▽5九龍▲8八玉として、あっさり逃げてしまうのが好手順です。(第24図)

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金はタダで取られましたが、玉の安全度は第23図より一気に上がったのがわかると思います。もちろん金をタダで取られるのは痛手ですが、何よりも玉の安全度を優先すべきです。第24図のように▲8八玉型を作れば、まだまだ粘れる形です。

 

格言6:端玉には端歩

端玉を攻めるには端歩を突くのが良い攻めです。一見遅いように見えても、それが最も早い攻めになることは多々あります。

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第25図で▲2二金とするのは筋が悪く、▽1三玉▲1五歩▽3三桂打くらいで後手玉は捕まりません。

一見遅いようでも早い端玉への端歩の攻め

ここでは単に▲1五歩と突きたいところです。▲1五歩は次に▲2二金▽1三玉▲1四歩▽2四玉▲2五金までの詰めろです。後手が受けるとしたら▽2二金が考えられますが、それにも構わず▲1四歩と取り込む手があります。(第26図)

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第26図で▽3二金とするのは、▲1三金▽同桂▲同歩成▽2一玉▲3三桂▽同金▲2二金までの詰みがあります。つまり、第25図で▲1五歩と突いた形では、後手玉は必死なのです。

 

格言7:両王手受けにくし

王手の中でも、"両王手" と呼ばれる王手があります。2枚の駒で同時に王手をかけることです。両王手をかけられたら玉を逃げるしか受けがないので、あらゆる王手のなかでも特に厳しい攻めになりやすいのが両王手です。

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第27図は▲6二歩に▽7一金と逃げたところですが、先手はここでどう攻めればよいでしょうか。

▲5三馬と引くのは習いある手筋です。(第28図)

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先手の次の狙いは、▲7一龍▽同玉▲6一歩成という狙いで、▲6一歩成の両王手が実現すれば後手玉はそのまま詰んでしまいます。ですが、第28図では▽5一歩と受けられてしまうと、後が続きません。

解っていても受けにくい両王手

第27図からの正解手順は、先に▲7一龍▽同玉としてから▲5三馬と引く手です。(第29図)

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第29図では▲6一歩成が見え見えですが、解っていても受けにくいのが両王手の狙いです。

▽8二玉は▲7一銀▽同玉▲6一歩成▽8二玉▲7一馬▽9二玉▲8二金までの即詰みです。

またこうしたケースで手筋の受けとされている▽5二金も、▲6一歩成▽同玉▲7一金▽5一玉▲4三桂以下の詰みです。(第30図)

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つまり、第29図の局面では後手に受けがありません。繰り返しになりますが両王手は解っていても受けがないことが多いです。攻める時はもちろんですが、自分もこの両王手にかからないように注意する必要があるでしょう。

 

格言8:邪魔駒は消せ

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第31図ではどう攻めれば良いでしょうか。▲2二銀と打つ手は後手玉の脱出路を防ぐ手筋の攻めのように見えますが、詰めろになっていないため不正解です。また▲2四銀と押さえるのも、▽3二飛と受けられると後一歩届きません。

盤上にないほうが良い駒もある

ここでは▲2二歩成が好手で、自分の邪魔駒を捨てる手筋です。▽同玉に▲2三銀▽1三玉▲3四銀成(第32図)と進み、後手玉に見事に必死がかかりました。(▽1三玉に代えて▽3一玉は▲4三桂不成以下の即詰み)

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味方の駒は時として邪魔駒になっている可能性があります。自分の駒だからといって必ず働いているわけではないということを覚えておくと良いでしょう。実戦ではその見極めが重要になってきます。

 

以上、将棋の終盤戦における格言を8つ見てきました。どれも実戦で頻出する格言だと思うので、覚えておくだけで終盤の上達の助けとなるはずですので、是非覚えておいてください。

 

格言を覚えた後は、定着させるための練習をする

素晴らしい寄せの手順には、当記事で紹介したような格言が絡んでいることが多々あります。自分が見事な寄せを決めた時や、プロやアマ高段者の対局を観戦して美しい寄せを見た時に、どの格言の考え方を指針として寄せの手順を導いたかを考えてみると、終盤力の向上に繋がるのではないかと考えています。

格言を覚えた後は、実戦や観戦を通じて格言を定着させるための練習が必要になってきます。「実戦に勝る修行は無い」との言葉通り、実戦は飛躍的に棋力向上に繋がることがありますが、1局に時間がかかることだけがデメリットです。(観戦も同様)

時間を有効活用できる勉強法として、以下のような終盤力を養成するための棋書を1冊持っておく方法があります。

この「谷川流寄せの法則」には、終盤の寄せの問題数が大量に収録されていますが、それとは別に終盤戦における戦いの考え方・セオリーもかなり膨大に収録されています。例えば以下のような内容です。

  • 詰む形と詰まない形の基本的な法則
  • 囲いの特徴と囲いごとの終盤の法則
  • 終盤戦における格言(※当記事で紹介したような内容)
  • 最終盤における戦いの考え方

終盤は序盤・中盤と比べるとかなり候補手が限られてくるため、考え方をパターン化しやすく、飛躍的に伸ばしやすい分野です。また、将棋は序盤・中盤よりも終盤力の向上が勝ちに直結しやすいという特徴もあります。これまで終盤戦を感覚だけに頼って指してきた人が、上記のような終盤力養成書を用いて終盤を体系立てて理解すれば、終盤の安定感が向上し、勝てるようになるはずです。

終盤の勉強と言えば、詰め将棋や次の一手も有名です。ただ、当記事で紹介したような格言に代表される終盤のセオリーは、それら詰め将棋や次の一手の基盤とも言える考え方です。既に詰め将棋や次の一手を取り組んでいる方は、終盤を体系立てて理解することで、普段の詰め将棋、次の一手の取り組みから更なる成果を得ることができるでしょう。

 

終盤における考え方を理解することは、実戦で指す楽しさを倍増させると思っています。中盤で優位に立てればどうやって一手勝ちを目指すかを考えることが楽しいですし、悪くなってもどうやって逆転しようか考えることが楽しくなります。

また、普段から少しでも終盤の練習をしておくことは、実戦で終盤を迎えた時に大きな自信となるはずです。当記事がみなさんの終盤上達に役立ち、楽しい終盤戦を指すキッカケになれば、幸いです。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

【次の一手|プロの実戦】問題63-三間飛車の中盤戦

プロ棋士の実戦棋譜から、これは凄い!と感じた一手や、覚えておくと棋力向上に繋がりそうな手筋などを、「次の一手」の問題形式で紹介します。問題を解いて棋力アップを目指してください。

今回は以下の棋戦からの紹介です。

▲加藤桃子女王 △香川愛生女流三段 第39期 女流王将戦 本戦トーナメント 準決勝 より

【問題図:▲7五銀 まで】

いま先手が▲7五銀と打った局面です。後手のみ一方的に飛車を打ち下ろせている上に、先手が歩切れで具体的な攻めが難しいことから、局面は後手が駒損ながら優勢です。優勢を維持するにはどう指せば良いでしょうか。

 (正解は下にスクロールするとあります)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正解は▽同角です。

【正解図:▽同角 まで】

▽同角と取ってしまうのが最善です。代えて▽4二角と逃げると、いきなり▲8四銀と出られる手が気になるところです。以下▽同玉▲6六角と進んだ局面は、玉頭の薄い後手の弱点をつかれており、後手としては嫌な展開でしょう。

正解図以下、▲同歩に▽8二玉が実戦の進行手順で、優勢を盤石にする好手順です。(図1)

【図1:▽8二玉 まで】

▽8二玉は次に▽4七飛成を狙いながら(すぐに▽4七飛成は▲6五角で王手飛車がある)玉頭を緩和した一石二鳥の手です。先手は飛車と角を手持ちにしていますが、後手陣は大駒の打ち込みに耐久力がある形で、すぐに厳しい攻めがありません。

自陣の唯一の弱点である玉頭を緩和しながら、ゆっくり▽4七飛成を間に合わす方針が優れた大局観でした。

 

いかがでしたでしょうか?問題の感想などございましたら、コメントをいただければ幸いです。

もしよければ、以下の問題にもチャレンジしてみてください!