将棋上達を目指す人のためのブログ

20代になってから勉強を始めて、将棋倶楽部24で六段になった将棋指しが書く

将棋に活かせる直観力を身につける2つのステップ

当記事は、将棋と直観の関係における考察記事です。直観力がなぜ将棋に重要なのかについて記載をし、またどうすれば将棋に活かせる直観力を身につけることが出来るかについて考えた記事になります。将棋に活かせる直観力を身につけたいと思っている方は、参考にしてみてください。

 

将棋における直観

直観とは、細かな論理的な理由づけをせず、意思決定を下す判断プロセスのことです。簡単に言えば、色々と考えずに即時判断することです。例えば初対面の人に対して、「この人はきっと良い人なんだろう」とか、「何となく自分とは合わない気がする」など、人に対して様々な印象を抱くと思います。これは直観が使われている1つの例です。

将棋においても直観は使われています。ある局面で、「何となくこの手が良さそうだ」「この手は悪手な気がする」などの判断をする時に直観が使われます。例えばインターネット上でのオンライン対局では、多くの場合が時間制限が短い早指し将棋であるため、この直観を活用して指し手を選択する必要があります。(将棋ウォーズの3分切れ負け、10秒将棋なんて特にそうですね)

 

直観の9割は正しく、将棋でも直観は武器になる

将棋において直観が大事であることは、強い人と対局した後の感想戦をしてみるとよく解ります。ある対局で強い人が指した素晴らしい好手について、なぜその手を指すことができたのかを感想戦で尋ねると、以下のような答えがよく帰ってきます。

いやぁ、よく解んなかったんですけど。何となくです。

こういう感想を聞くと、「これが天才と凡人の差か・・・」などと捨てセリフを吐いていまいそうですが、実際はそうではありません。強い人は直観力は優れているのです。研ぎ澄まされた直観力は、論理的な思考プロセスを地道に積み上げていくよりも、精度が高く結果を生むことも多々あります。その証拠に、直観の9割は正しいと言われています。これはイスラエルのとある大学で研究された結果です。もし直観が研ぎ澄まされれば、将棋の勝率は劇的に向上するのではないでしょうか。

 

将棋に活かせる直観力を身につけるための2つのステップ

直観を磨くことが将棋に役立ちそうだなということが確認できたところで、どうすれば直観を磨けるのかということを考えてみます。直観という言葉をもう少し掘り下げると、直観とは脳がこれまでインプットしてきた学習のデータベースから、無意識に手がかりやヒントを見つけて、そっと教えてくれる答えというのが定義になります。この定義から、直観の精度を向上させるために必要なこととして、以下の2アクションが必要になってくると思います。

  1. 将棋の学習を通じ、脳内のデータベースを拡張する
  2. 将棋の実戦経験で、直観を使用して精度を向上させる

 

1.将棋の学習を通じ、脳内のデータベースを拡張する

直観は時に素晴らしい答えを導いてくれます。ですが、導いてくれるのは「自分が知っていること」だけです。知らないことを教えてはくれません。そのため、まずは知識と経験の絶対量を増やさなければいけません。将棋で言えば、見たことも聞いたこともない手筋を、実戦でいきなり直観が導いてくれるということはあり得ないのです。

認識しておきたいのは、直観は高精度かつ高速な脳内検索ツールでしかない事です。情報を0から生み出してくれるものではありません。「こんな好手今まで1度も指したことが無い。僕は天才だ!」と思った手を指せても、それは今までどこかで目撃していたり、また類似した考え方で選択された手を見てきた可能性が高いでしょう。つまりは、元々知っていた情報について、直観が高速に導き出してくれたに過ぎません。

では、どのような知識を事前に身につけておけば、より直観を生かすことができるのでしょうか。以下に、僕が考える直観力を身につけるための知識について記載します。

 

直観力に繋がる知識1ー定跡(定跡には将棋の基本が詰まっている)

以前の四間飛車の記事でも記載しましたが、定跡には将棋の基本的なセオリーが詰まっています。そのため、ただ定跡を記憶するだけで、将棋における基本的なセオリーを脳内が記憶してくれます。参考までに、四間飛車の定跡に触れることで身につけられる将棋のセオリーは以下の記事の後半で記載しておりますので、良ければ確認してみてください。

 

直観力に繋がる知識2ー手筋や格言(手筋、格言と呼ばれるのには理由がある)

格言や手筋と呼ばれるものには、当然ながら呼ばれるに相当する論理的根拠が存在します。それぞれの駒には働きの違いがあり、役割も違います。これら駒の特性を存分に生かすことができるもの(金底の歩など)あるいは駒の弱点を突く格言(金はナナメに誘えなど)など、各駒の働きの違いから長所・短所を論理的に分析された結果が手筋や格言と呼ばれるものです。

将棋における手筋や格言は、「将棋の手筋」「将棋の格言」などでネット検索すれば有名なものはすぐに見つけられます。まずは有名どころをしっかりと押さえておけば問題ないでしょう。手筋を定着させるためには、手筋を生かした実戦問題集などをやってみるのも良いかもしれません。

ちなみに当ブログでは以下の記事で、終盤における将棋の格言をまとめていますので、良ければ一読してみてください。

 

 
直観力に繋がる知識3ー実戦棋譜(バイブルとなる棋譜は直観を支える)

次にオススメするのは、プロの実戦にたくさん触れておくことです。可能であれば、自身が遭遇する可能性のある戦型において、バイブルとなるような棋譜を1局ずつ見つけられればベストでしょう。バイブルとなる棋譜を覚えておくことは、各戦型の将棋の流れを見通すことに役立ち、直観力を支えてくれます。

棋譜の記憶には「棋譜並べ」をする必要があります。ただここで注意が必要なのは、ただ並べるだけでは駄目だというところです。そもそも、単に符号を暗記するというのは苦行で、まず続かないでしょう。棋譜を記憶するためには、一手一手の指し手の意味をしっかり考えながら、手の流れを掴まなくてはいけません。棋譜並べというのはサラっと出来るように見えますが、じっくりと時間をかけながら行うものです。

棋譜並べの1つのアプローチとして、ロールモデルとなるような棋士が居るのであれば、その人の棋譜を徹底的に並べるというのは有効な方法です。僕も現役時代にこの方法を取り入れており、プロ棋士ではありませんが将棋倶楽部24の超強豪の人を1人抜粋して、棋譜を徹底的に並べていた事がありました。こ

の方法の良いところは2点あります。1点目は多くの棋士を並べるより、1人の棋士について徹底的に並べることで、棋風、思考の理解が早まり、素早く脳内データベースを構築できるところです。もう1つは、自分のお気に入りの棋士の棋譜を並べることはそれだけで「楽しい」と感じやすく、棋譜並べの継続に繋がりやすいという点です。

以下のような谷川ー羽生の100番勝負などはお勧めです。2人の棋士について徹底的に並べることができるからです。

2.将棋の実戦経験で、直観を使用して精度を向上させる

実戦で直観の使用履歴を蓄積し、精度を高める

直観の精度を向上させるためには、ただ脳内のデータベースを充実させるだけではいけません。直観は、直観に従って行動した経験が積み重なるほど、よりその精度は高まっていくことが研究で明らかになっています。初心者に対し、たくさん対局をこなすよう将棋を指導をする人達がいますが、それには実戦を通じて直観が磨かれ、結果として棋力向上に繋がるということを指導者の人達は経験から知っているのです。

では、実戦経験をこなすことでどのように直観の精度が向上していくのかについて、簡単に整理してみましょう。直観を使用すると、脳内には「直観の使用履歴」が蓄積されていきます。直観の使用履歴には直観の内容、結果、理由(結果の理由)などが蓄積されて脳内に溜まっていきます。以下のようなイメージです。

【図:直観の使用履歴】

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 感想戦で「結果」と「理由」を正しく埋めて、次回以降に活用する

直観の使用履歴が蓄積されるほど、以降の直観の精度は向上します。直観使用時に過去の直観の使用履歴を参照し、有効な履歴は活用され、不要な履歴は捨てさられます。この時に大事なのは、図にある「結果」「理由」が記録されているかどうかです。直観を使って指した手の結果がどうだったのか。またそれは何故か、という2点について、正しい履歴として蓄積されていなければ、その後の対局での活用が見込めません。

結果と理由を記録するために必要なことは、言うまでもなく感想戦による反省です。感想戦による反省を行うことで、自分が直観を使って着手した手の結果、そして理由を明らかにすることができます。そのため、対局後の感想戦はとても大切です。ただ、感想戦ですべての着手が検証対象なのかというとそうではありません。実戦では「読みを丁寧に入れた手」「直観に頼って指した手」の2パターンがあると思います。直観の使用履歴で管理すべき対象は、後者の直観に頼って指した手です。

感想戦で注意すべき点としては、直観に頼って指した手というのは局後あまり記憶に残っていないことが多いところです。むしろ、どちらかといえば前者の「読みを丁寧に入れた手」のほうが、実戦で脳が頑張って考えた手であるため、記憶に残りやすいことが多いでしょう。直観に頼った手というのは、余計な思考プロセスを挟まず無意識に判断を下しているため、対局後の記憶に残りにくいのです。

どうすれば感想戦で「直観に頼って指した手」に触れられるでしょうか。ここで頼りたいのが「対局相手」です。対局相手は、こちらが読んで指した手か、直観に頼った手かどうかは解りません。それに関わらず対局相手はこちらの手を評価をしてくれますので、感想戦では印象に残った手を聞いてみるようにすることをオススメします。その際、「すぐ指してきたけれど、正直意外だった」というような意見が聞ければシメたものです。そのような手は直観に頼って指した手である可能性が高いからです。

最近はソフトによる検証が主流です。確かにソフトの検証結果は限りなく正解に近く、信憑性が高いでしょう。ですが、ソフトからは上記にあるような「すぐ指してきたけれど、正直意外だった」という人間らしい感想はもらえないため、自分が直観を使って指したかどうかに気付くことが難しいかもしれません。

オフラインで人と感想戦をしても棋力向上に繋がらないと評価する人が居るかもしれませんが、直観を磨くということに関しては、オフラインの感想戦が、最も有効ではないかと考えています。

 

いかがだったでしょうか。これまで直観を使って指したかどうかなど気にされなかった方も多いかもしれませんが、1つの上達方法のアプローチとして、よければ参考になさってみてください。

以下は当記事の参考文献です。直観力そのものについて興味がある方は、1読してみてください。(将棋について記載されているページもあります)

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

 

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