大人からの将棋上達ブログ

成人後に将棋を本格的に始め、24で六段になった将棋指しの

将棋トーナメントに参加してきました!

ゴールデンウィークの2日目、兵庫県の元町にある将棋道場にて開催された将棋トーナメントに参加してきました。トーナメントは事前に参加の申し込みは不要で、当日の締め切り時間までにエントリーすれば、段位関係なく誰でも参加することができます。この日は計12名がエントリーし、組み合わせは段位関係なく抽選で行われます。参加費は1人300円で、優勝者と準優勝者には賞金が出ます。

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抽選の結果、運よくシードとなって準々決勝からの参加となりました。この日の参加者には道場で最高段位の六段の方や、アマチュアの元タイトル保持者の方も来ており、参加者のレベルが高いトーナメントとなりました。持ち時間は30分切れ負け。決勝のみ秒読み30秒というルールが加わります。

 

1回戦: 対四間飛車(四段の方)

1回戦の相手は四段の方でした。参加者は全12名ですが、この日は殆どの方が四段以上の段位を保持している方であったため、どの方と当たっても実力者ばかりです。手番は段位が下位の人が先手になります。私は道場で五段の認定を受けているため、相手の方が先手番、私が後手番になりました。

四間飛車に対してミレニアムを採用

戦型は相手の方の四間飛車に対して、最近勉強中であるミレニアムを採用しました。

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第1図は序盤戦の駒組みの局面で、相手の方は四間飛車から三間飛車に振り直し、石田流に構えてきました。ミレニアムの対策でよく見かける指し方です。私は石田流への組み換えを特別阻止しようとはせず、自玉の囲いを優先させました。後手番ということもあり、自玉の堅さという主張点を作ってカウンターを狙います。

常套手段の桂跳ねで優勢に

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第1図から▲4五歩▽6二角▲4六角と進んで第2図です。次に▲7四歩を狙いにして先手が好調に見えますが、実はこの構想が疑問でした。ここで後手に手筋があります。

第2図から▽4五桂▲同歩▽4四歩と進めるのが手筋です。(第3図)

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4五桂~4四歩で桂を取り返すのは、ミレニアムで頻出の手筋です。第3図は次の▽4五歩で桂を取り返せることが確定していますし、4五に拠点を作ることができるため、後手十分な局面です。

端攻めから崩す

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第3図より十数手進んで第4図。相手の方が▲6二桂成としたところです。成桂を作られていますが、後手の陣形がしっかりしており、手を作れれば優勢を拡大できそうな局面です。

私は第4図から▽1五歩と端を攻めていきました。桂交換になっているため端が弱点であり、角の効きを生かして端を攻めるのが急所です。第4図以下▽1五歩▲6三成桂▽4四角▲1五歩▽1八歩と進んで第5図です。

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第5図以下▲同香は▽1七歩▲同香▽2五桂で攻めが続きます。

実戦は▲同玉でしたが▽1五香▲2八玉▽1八歩と進み、優勢を拡大することができました。

先手玉の退路を狭めながらの攻め

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第6図は先手が▲7四飛と走った局面。角取りに当たっていますが、ここでは角取りを受けずに▽4六歩と突き出しました。▲4四飛と角を取る手には▽1七角の王手飛車で切り返すことができます。

第6図以下は▽4六歩▲同金▽2五桂と進みました。(第7図)

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▽2五桂は▲3七玉を防いだ退路封鎖の手筋で、次に▽1七角成以下の詰めろになっています。また、ここで▲3九玉とするのは▽5七角の王手金取りが決まります。先ほどの▽4六歩の効果で常に▽5七角で挟み撃ちにするのが狙いとなっています。

第7図以下は▲3七銀▽1七角成▲3八玉と進んで第8図の局面です。

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 ここで寄せの決め手があります。

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▽2九角が決め手で▲同玉は▽3七桂成で必死がかかります。実戦は▲4八玉と逃げましたが、▽7四角成と飛車を抜いて勝負ありです。(第10図)

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準決勝: 対向かい飛車(六段の方)

抽選でシードに入っていたため、2回戦が早くも準決勝です。ここで勝利すれば賞金の獲得が確定するため、負けられない一戦です(笑)

相手は現在道場で最高段位である六段の実力者です。段位は私のほうが下なので、私の先手番、相手の方の後手となりました。

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相手の方の向かい飛車急戦に対し、左美濃で対抗しました。いま後手が▽2四歩と仕掛けてきたところで、向かい飛車の基本の攻めです。以下は▲同歩▽同飛▲2五歩と進め、後手からの速攻を警戒しながら持久戦を目指していきます。(第2図) 

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穴熊に潜って作戦勝ちに

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第2図からはお互い駒組みを進めて穏やかな展開となりました。第3図では先手が銀冠穴熊を完成させ、作戦勝ちの局面です。本来であれば、先手陣がここまで組みあがる前に後手が動きたかったところでしょう。後手は▽9五歩~▽8五歩と動いて来ましたが、▲6八金右▽8六歩▲同角と進んで第4図です。

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第4図は次に▲2四歩の狙いがあり、以下は▽同角▲同飛▽同飛▲4二角という手順があります。そのため後手は▽8五歩と打ち、▲7七角と下がらせその狙いを防ぎましたが、端攻めを狙っていた後手の攻めが空振りに終わった格好です。

ちなみに▲7七角に代えて▲9七角と引く手も考えられそうですが(▲2四歩の狙いを継続させる狙い)、▽2三歩と受けられた時に指す手が難しいため▲7七角が勝ります。

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第5図は第4図から30手ほど進んだ局面。先手の桂得であり、陣形も先手のほうが堅陣な構えです。ここでは優勢を確固たるものにすべく、▲8七歩と打ちました。(第6図)

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▲8七歩は自陣の傷を消した手です。具体的には▽9八歩▲同玉▽8六桂という急所の攻め筋を予防しています。現状後手の持ち駒に桂はありませんが、3七にいる桂や、持ち駒の桂を使いやすくした意味があります。実戦ではこの歩で形勢がはっきりとした印象がありました。

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第6図からさらに20手ほど進んで第7図。終盤勝ちが近づいている局面です。自陣は鉄壁ですので、攻めの継続手だけを考えれば良い局面です。

実戦は▲7七桂打としました。(第8図)

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次に桂を跳ねて▲7三歩成が狙いの手順です。以下は▽6三金としましたが(▽7二歩の受けを用意)▲6五桂と跳ねて、▲7三歩成と▲5三桂成の両方を見て勝勢です。実戦ではここで相手の方が時間切れとなり、決勝進出を決めました。格上の段位の方に一発を入れ、良い状態で決勝に進みました。

 

決勝: 対中飛車(五段の方)

決勝は五段の方です。相手の方は道場で私と同じ五段で登録されている方ですが、アマ大会の実績十分で、某アマ大会での優勝経験もある関西の強豪です。独特の将棋感覚と、型にとらわれない指し回しに定評があります。1回戦、準決勝ともに良い将棋で勝ち上がれたので、自分の将棋に自信を持って強豪との一戦に臨みました。

※図面に対局者の名称を入れ忘れたので、以下に先後の対局者を明記します。

▲先手:私

▽後手:相手の方(五段の方)

ツノ銀中飛車 序盤の相手の工夫

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戦型は私の居飛車穴熊、相手の方のツノ銀中飛車となりました。ツノ銀中飛車は最近あまり見かけなくなった印象がありますが、相手の方はツノ銀中飛車を得意としています。第1図の▽4二角が比較的珍しい手。プロの公式戦で多く指されているのは▽4五歩と角をぶつける手であり、ツノ銀中飛車の定跡手とされている一手です。局後この▽4二角について聞いてみたところ、後手番なので争点を作らず、千日手を狙う構想だったようです。

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第2図はお互いの駒組みがほぼ飽和状態の局面ですが、ここまで進んで作戦負けを意識しました。相手の狙い通り、先手から戦いの争点を作りにくい将棋になっています。

本譜は先述の通り、相手が角筋をぶつけてなかったため、角筋を開けたまま戦う駒組みで進めていました。しかしどうやら疑問だったようです。角筋をぶつける本来の定跡型と同様に、▲6七金型の穴熊に組むべきでした。1例としては以下のような駒組みです(参考図1)

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後手が▽4二角型の場合、最終手▲3六歩をつきやすいのがポイントです。角筋が開いた▽3三角型であれば、▲3六歩には常に▽5五歩▲同歩▽同角という手順があり、飛車の小鬢を狙われるため指しにくい一手でした。しかし▽4二角型ではその筋がなく、堂々と指すことができます。参考図1以下▽5一飛なら▲3五歩▽同歩▲4六銀▽3六歩▲2六飛という手順で、先手が主導権を握れる展開ではないでしょうか。

信じられないミスで姿焼き模様に

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第2図から十数手進んで第3図、後手が▽6四角とあがったところです。先手は6筋で1歩を獲得できており、第2図の局面よりは具体的な打開策を見いだせそうな局面です。しかし実戦はここで▲6七銀とあがり、これが大悪手。▽4五桂と跳ねられて、次の▽3七桂成と▽5七桂成の狙いを同時に受けることができません。(第4図)

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しかも実戦では▽3七桂成に気づいておらず、ノータイムで▲5八飛と回りました。当然ノータイムで▽3七桂成とされてフリーズ。。。以下▲同桂▽同角成と進み、穴熊の姿焼き模様となってしまいました。(第5図)

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第3図では▲6七銀に代えて、▲2四歩▽同歩▲同飛▽2三歩▲2八飛としておくべきでした。(参考図2)

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参考図2以下、後手が自然に指すなら▽2一飛が考えられますが、その場合の1例手順を以下に記載します。

参考図2以下、▽2一飛▲6七銀▽4五桂▲5八飛▽3七桂成▲同桂▽同角成▲5五歩▽1九馬▲5四歩▽同銀左▲4六桂▽4三銀▲5三飛成▽5一香▲4三龍▽同金▲3二銀(参考図3)

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飛車が5筋からズレたことで、本譜と同じ順で進めた場合に5筋から反撃する筋が生じます。参考図3まで進んだ局面は先手が十分に戦える局面だと思います。

中盤は実戦的に手を作って行くが、形勢が広がっていく

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第6図は、後手の銀桂交換であり、私が駒損をしています。桂を2枚手持ちにしているものの、依然として手を作っていくのが難しい局面です。実戦は第6図以下、▲4六歩▽同歩▲4五桂▽4二馬▲4四桂▽3一金▲3三歩と強引に手を作っていきました。

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一見、手が作れているように見えなくもないですが、これはツノ銀側の勝ちパターン。玉から離れた金銀に対して強引に攻めすぎな感があります。実戦は第7図以下▽6六銀が当然の一手で、後手が優勢を拡大しました。

第6図からは▲2九飛が形勢が悪い側なりの頑張り方だったと思います。(参考図4)

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参考図4から▽4二馬なら、再び▲3九飛とまわって千日手を提案するのが狙いです。後手が千日手を打開するとすれば▲3九飛に▽4四銀打とする手が考えられますが、それには▲5九飛と5筋を補強しながらじっと手待ちをしてどうか。こちらのほうが形勢が悪い側なりの粘り方として良かったと思います。

粘りが功を奏して好機を迎えるも、終盤で読み負ける

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第8図は第7図から30手ほど進んだ局面です。粘りが功を奏して相手の方にも細かいミスが出たこともあり、第8図の局面は形勢が接近しています。実戦は第8図以下は▲5一飛と打ちましたがこれが悪手。以下▽6五桂が後手玉の逃げ場所を広げながらの攻防手となり、後手が1手勝ち模様となりました。

第8図では▲5一飛には代えて▲6九桂と打つ手が勝りました。▲6九桂以下の想定手順は▽6五桂▲5七桂▽7七桂成▲同金▽6七金▲8一飛▽8二銀▲6五桂▽7七金▲同桂と進んでどうか。(参考図5)

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参考図5の局面は次に▲7三金以下の長手数の詰めろがかかっています。後手は受けるとしたら▽6四銀左が考えられますが、▲6一角▽6二金打に▲7一角!と打つ手がありました。(参考図6)

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次の一手問題に出てきそうな、必死をかけた一手です。参考図6で▽6一金と角を取るのは、▲7三金▽同銀引▲同桂成▽同玉▲6五桂打以下の詰みです。

また参考図6では▽6九飛と打って先手に合い駒を請求する手も考えられますが、▲8八玉▽6八飛成▲9七玉とあがっておけば、合い駒を使う必要がなく後手玉の必死がほどけません。

実戦は第8図から▲5一飛でまだ難しいのでは?と思っていましたが、数手後に後手に明解な決め手がありました。

手筋の歩成が決め手

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第9図は▽4九飛に▲8九香と受けたところ。ここで▽6七歩成が決め手でした。(第10図)

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▽6七歩成が詰めろになっています。これに対して▲同金は▽8八銀以下の即詰み。受けても一手一手なので、実戦は▲6五桂打と形作りに。(第11図)

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ここからは実戦詰め将棋です。(正解は以下にスクロールするとあります)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正解手順は、▽8九飛成▲同玉▽7八と▲同銀▽8七香▲8八桂▽7九金▲9九玉▽8八香成▲同玉▽7八金▲同玉▽6六桂(第12図)です。

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▽6六桂以下は、▲6七玉▽5八銀▲5七玉▽4七歩成▲6六玉▽6七金までの詰みです。他の逃げ場所はどこへ逃げても先手玉が詰みます。実戦はこの▽6六桂で投了しました。

強豪相手に中終盤で何とか追いすがりましたが、▽6七歩成がぴったりの手でさすがという印象です。元アマタイトルホルダーの名は伊達ではありません。

大会を終えての所感

惜しくも準優勝という結果になりましたが、勉強中のミレニアムで勝てたことや、道場最高段位の六段の方相手に良い将棋が指せたことは自信になりました。決勝も負けはしましたが、勉強になる一手、手筋に多く出会えたため、総じて楽しく指せたトーナメントだったと感じています。

また準優勝という結果であったため、賞金をいただくことができました!

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賞金額の記載は控えさせていただきますが、自分が想定していた額よりは、良い額が頂けたなと感じています。次回参加することがあれば、また優勝を目指して頑張りたいですね!

トーナメントのルールの補足ですが、段位差が2段以上ある場合、段位の高い側が駒落ちの上手で指すことになります。そのため、実力差があっても上位進出を狙える可能性がありますので、是非参加してみてはいかがでしょうか(実力詐欺はダメですよ!笑)

また当道場では将棋教室もやっていますので、気になる方は以下を見てみてください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!