将棋上達を目指す人のためのブログ

20代になってから勉強を始めて、将棋倶楽部24で六段になった将棋指しが書く

【序盤研究】横歩取り4五角戦法の対策

当ブログは序盤研究についての記事を全く書いてきませんでしたが、ようやく初の序盤についての記事です。タイトルの通り、横歩取り4五角戦法の対策について整理をした記事になっています。

先手番で横歩取りを指してみたいと思っていても、これから取り上げる4五角戦法に代表されるような急戦対策を準備しないと、研究であっという間に負けてしまいます。しかも、4五角戦法は乱戦の定跡であるにも関わらず、後手が途中で変化できそうな局面が非常に多いため、すべての変化に対して網羅的に準備をするのは大変です。

当記事は4五角戦法のすべての変化手順において、最善の対応を示すことを目的とはしていません。乱戦を目指した後手の戦略に対し、なるべく乱戦を避けて戦うことを基本指針に位置づけて、相手の研究にハマらないよう自分のペースで戦えるようになることが目的です。各変化をガチガチに暗記するというよりは、主要変化における指針の理解と、手の流れをイメージできるようになれば十分だと思います。

 

この記事は、こんな人に向いていると思います。

  • 横歩取りを指してみたいが、4五角戦法が怖くて指せない!
  • 棋書を買ってまで、定跡の勉強をガチガチにしたくない!
  • 後手の研究にハメられにくい、4五角戦法対策が知りたい!

4五角戦法と遭遇したら真正面から叩き潰したい!! というよりは、微差でも良いのでリードを確実に確保し、負けにくい対策がほしいという人向けです。

 

時間と意欲のある方は、棋書にて対策の体系的な習得を!

もし定跡の勉強をする時間と意欲のある方は、横歩取りの乱戦対策の棋書を1冊購読されることをお勧めします。僕のお勧めは、飯島栄治さんの【横歩取り 超急戦のすべて】です。横歩取りの乱戦が広く網羅されているだけでなく、各章に「次の一手形式」の問題があるのが特徴です。当ブログの次の一手問題を解かれている方には、相性の良い棋書ではないかと思います。

 

目次:対横歩取り4五角戦法

1.▽2三歩を打たずに▽6七角成の変化

【初手から】

▲7六歩▽3四歩▲2六歩▽8四歩▲2五歩▽8五歩▲7八金▽3二金▲2四歩▽同歩▲同飛▽8六歩▲同歩▽同飛▲3四飛▽8八角成▲同銀▽2八歩▲同銀▽4五角▲2四飛▽6七角成 (図1)

【図1:▽6七角成 まで】

図1の最終手▽6七角成のところ、一般的な定跡手は▽2三歩ですが、▽2三歩を打たずに▽6七角成とされた時の対処手順を、念のため整理しておきましょう。

図1以下は▲同金▽8八飛成▲2一飛成▽8九龍▲6九歩▽5五桂▲6六金(1)▽4七桂成▲5六角(2) が進行例です(図2) 

※太字の手は図面以下で解説

【図2:▲5六角 まで】

(1):▲6六金に代えて▲6八金は▽6七銀、▲5六金は▽6七桂成と進み、受けきりが難しい局面になってしまいます。

(2):▽4七桂成と進んで後手好調に見えますが、最終手▲5六角が用意の一手です。8九の龍と4七の成桂の両取りとなっており、この手で後手の攻めが止まっています。以下は▽8七龍と▽9九龍の応手が考えられますが、▽8七龍は▲2四角▽6二玉▲4七角、▽9九龍は▲4七角▽4四香▲4五歩▽同香▲4六歩▽同香▲2四角が進行例です。いずれも▲2四角が後手の居玉を咎めた切り替えしです。

▽2三歩を打たずに▽6七角成の変化 【まとめ】
  • ▽5五桂と打たれたら▲6六金と逃げる
  • ▲5六角と打って龍と成桂の両取りをかける
  • ▲2四角が居玉を咎めた用意の切り返し

このあたりの対応を事前に認識しておけば、実戦で指されても大丈夫でしょう。

 

2.▽2三歩に▲7七角の変化

【初手から】

▲7六歩▽3四歩▲2六歩▽8四歩▲2五歩▽8五歩▲7八金▽3二金▲2四歩▽同歩▲同飛▽8六歩▲同歩▽同飛▲3四飛▽8八角成▲同銀▽2八歩▲同銀▽4五角▲2四飛▽2三歩▲7七角▽8八飛成▲同角▽2四歩▲1一角成 (図3)

                                                                                                                                           

【図3:▲1一角成 まで】

ここからは横歩取り4五角における、本来の定跡手順を整理していきます。図3はいま先手が▲1一角成としたところです。ここから後手の指し手で有力なのは、

  • 3三桂
  • 8七銀
  • 2五飛

の3つがよく遭遇する変化です。▽2五飛はやや珍しく、▽3三桂と▽8七銀の2つが体感的には90%以上を占めるのではないでしょうか。この3つの変化について、対応の方針を整理しておきましょう。

 

2-1.▲1一角成に▽3三桂の変化

図3より▽3三桂▲8八飛 (図4)

                                                                                                                                                                        

【図4:▲8八飛 まで】

▽3三桂に対して、有名な定跡手として▲3六香を知っている方は多いのではないでしょうか。しかし▲3六香は有名であるがため、後手の研究ターゲットにされやすいのが怖いところ。▲3六香は後手が途中で変化をしやすい将棋です。これは個人的な意見ですが、半端な予習で▲3六香の変化を選ぶのは危険だと思います。そこで推奨する手が▲8八飛と打つ手です。

▲8八飛は一直線の攻め合いで相手を倒すというよりは、乱戦をなるべく避けて局面を落ち着かせることを目指した一手です。後手の歩切れをついた▲8一飛成の狙いは当然あるものの、打った飛車の主な役割は、効きを生かして自陣の隙を無くすことです。▲3六香よりはマイナーで認知度が低い対応ですが、実は有力な定跡手の1つです。

この手に対して後手の想定される応手としては、

  • 6七角成
  • 2五飛
  • 1八銀

という3つの変化です。以下、順番に整理します。

 

2-1-1.▲8八飛に▽6七角成の変化

図4より、▽6七角成▲同金▽7九飛▲6九歩▽8七歩▲6八飛(1)▽8九飛成▲6六角(2)▽7九銀▲5八飛▽8八歩成▲3三角成▽同金▲同馬▽4二銀▲2三馬(3)▽5五桂▲4八玉(4)▽6七桂成▲同馬▽9九龍▲7五桂  が進行例です。(図5) 

※太字は図面以下で解説。

【図5:▲7五桂 まで】

(1):▲同飛には▽7八銀があります。この変化も先手が悪いわけではありませんが、当記事の乱戦を避ける方針とは異なるため、検討対象外とします。

(2):この手は覚えておいてください。自陣を受けながら▲3三角成を狙った、この定跡手順における最重要の一手です。

(3):馬の逃げ場所はたくさんあるところですが、推奨は▲2三馬です。推奨の理由は3点あります。①次に▲4一金の狙いがあるところ ②6七の金に紐をつけているところ ③間接的に8九の龍に狙いをつけているところ

(4):この変化では1度は指す必要のある一手です。一手指すだけで一気に自玉の安定度が増します。指すタイミングはここがベストで、ここで指せるようにするために▲2三馬で6七の金に紐をつけています。

図5の局面の形勢は互角に近い局面だと思いますが、自玉がすぐに寄せられる心配はなくなりました。開戦早々に生きるか死ぬかを味わうような乱戦を避けたい、という方針の狙い通りの展開です。局面自体も最終手▲7五桂の対応が悩ましく、僕は先手を持って指してみたいと思う局面です。

 

2-1-2.▲8八飛に▽2五飛の変化

図4より、▽2五飛▲7七金▽7九銀▲7八飛▽2七角成▲同銀▽同飛成▲3九金 が進行例です。(図6)

※太字は図面以下で解説。

【図6:▲3九金 まで】

途中の▲7七金と▲3九金が用意の受けで、図6の局面で後手の攻めは無理気味です。攻め続けるとしたら▽6八銀打ですが、▲同飛▽同銀成▲同玉と進んだ局面は後手の持ち駒が飛車1枚しかなく、攻めの継続手が難しい局面です。

 

2-1-3.▲8八飛に▽1八銀の変化

図4より、▽1八銀▲3九金(1)▽2九銀成▲同金▽6六桂▲6八金(2)▽7九飛▲6九銀▽7六飛成▲8一飛成▽6七馬▲7七歩▽8五龍(3)▲同龍▽同馬▲6七歩▽8七飛▲2一飛 が進行例です。 (図7)

※太字は図面以下で解説。

【図7:▲2一飛 まで】

(1):代えて▲同香は▽同角成で後手優勢です。▲3九金が唯一の受けです。

(2):▲同歩は▽7八角成▲同飛▽8七飛があります。この進行は難解ですが、後手も十分戦える変化ですし、当記事の乱戦を避ける方針から外れるため研究対象外とします。

(3):代えて▽6八馬▲同玉は、後手の攻めが切れ模様です。

この▽1八銀というのは知っていないと浮かばなさそうな手です。しかし、この戦型のスペシャリストによると、これを最善手と評価している人も多いようで、私も実戦で何度か指された経験があります。

▽1八銀には▲3九金が唯一の受けです。後手が攻めを続けるとすれば、図7までの進行例のような変化になるのではないでしょうか。先手の対応は一例ですが、この変化では途中で攻め合いに転じる必要がありそうです。途中▲6七歩を打った局面で後手の攻めが一旦止まるため、そこで反撃に移るのが良いのではないでしょうか。最終手▲2一飛と打った局面は、次の▲3三馬が厳しく、先手が優勢の局面です。 

▲1一角成に▽3三桂の変化 【まとめ】
  • ▽3三桂には8八飛じっくりとした戦いを目指す。基本は相手の猛攻をケアしつつ乱戦を回避する。
  • ▽6七角成には▲6六角で、▽2五飛には▲7七金で長い戦いを目指す。
  • ▽1八銀には▲3九金が絶対手。機を見て受けから攻めにギアチェンジする。

 

2-2.▲1一角成に▽8七銀の変化

図3より、▽8七銀▲7七馬 (図8)

                                                                                                                                           

【図8:▲7七馬 まで】

▽3三桂と並び、▽8七銀は頻出の変化です。▽8七銀に対する有力手は▲7七馬以外にも▲7九金や▲同金など多数あり、実はどれも有力です。その中でも当記事が推奨するのは▲7七馬です。理由は全体指針である乱戦を避ける将棋を目指しやすいためです。図8での後手の有力手としては、

  • ▽7六銀不成
  • ▽7八銀成

の2つが考えられます。以下、順番に整理をします。

 

2-2-1.▲7七馬に▽7六銀不成の変化

図8より、▽7六銀不成(1)▲6八馬▽8八歩▲4六飛(2) (図9)

※太字は図面以下で解説。

                                                                                                                                   

【図9:▲4六飛 まで】

(1):▲同馬とするのは▽2六飛があり、後手良しです。

(2):▲4六飛が推奨手です。この手を推奨している理由としては、後手の変化が▽8九歩成か▽5四角の2択にほぼ限られており、準備がしやすいところです。

 

2-2-1ー1.▲4六飛に▽8九歩成の変化

図9より、▽8九歩成▲4五飛▽9九と▲5八玉▽8九飛▲7五飛▽7四香▲5五飛▽4二金▲7五歩が進行の一例です。(図10)

【図10:▲7五歩 まで】

▽8九歩成の変化では、先手が角を取るため駒得となります。駒得を生かせるように、戦いを長引かせることを指針とした差し回しを心がけたいところです。

最終手▲7五歩と打った局面では先手の駒得が大きく、ここまで進めば先手がはっきり優勢です。

 

2-2-1ー2.▲4六飛に▽5四角の変化

図9より、▽5四角▲8八金▽8七銀成▲7八金(1)▽同成銀▲同馬▽8七金▲7九馬(2)▽7四飛▲7六歩(3)▽同飛▲同飛▽同角▲6六飛▽9四角▲6三飛成▽6二金▲6六龍▽7六飛▲同龍▽同角▲6六飛▽5四角▲5六香▽7二角▲8八歩 が進行例です。(図11)

※太字部分は図面以下で解説

【図11:▲8八歩 まで】

(1):▲7八金は受けの手筋で、金を取られた時に同馬と取れるようにした手です。次に▲8八歩と打つ手を狙っているため、後手も▽同成銀とするよりありません。

(2):▽8七金に対する逃げ場所は、飛車の打ち込みを警戒して▲7九馬とします。▲7九馬は次に▲8八歩を狙っているので、後手は一手の余裕をあけさせないように攻める必要があります。

(3):▽7四飛には▲7六歩とします。飛車交換後に▲6六飛と角取りに打ち、先手は龍を作ります。代えて▲8八歩で金を取りに行くのは▽7八飛という強襲があるので注意が必要です。

後手が▽5四角と逃げた場合は、先手も▲8八金と手を戻してゆっくりと戦います。図11までの進行は後手が何とか手を作ろうとした場合の一例ですが、図11まで進んだ局面は金が取れる形であり、先手優勢だと思います。

 

2-2-2.▲7七馬に▽7八銀成の変化

図8より、▽7八銀成▲同馬▽6六金▲5八銀 が進行例です。(図12)

【図12:▲5八銀 まで】

▽7八銀成も自然なようですが、実は後手の攻め筋があまり多くありません。図12のように▲5八銀とガッチリ受けておけば、後手からの厳しい追撃の攻めはないと思います。

▲1一角成に▽8七銀の変化 【まとめ】
  • ▽8七銀に対する対応の中でも、落ち着いた戦いを目指しやすいのが▲7七馬
  • 4六飛と打つのが長期戦を目指した一手で、後手の乱戦狙いから外しやすい。
  • ▲4六飛に対して▽8九歩成でも▽5四角でも、先手は自陣の傷を消すことに専念して指せば形勢が良くなりやすい。

 

2-3.▲1一角成に▽2五飛の変化

図3より、▽2五飛▲3九金▽2七銀▲同銀▽同馬 (図13)

【図13:▽同馬 まで】

▽2五飛は先述の▽3三桂や▽8七銀に比べれば少し珍しいかもしれませんが、有力な変化です。図13の局面では、後手が2五に打った飛車の力を使って2筋の突破を狙っています。

ここで先手の応手には▲3六銀が見えますが、▲3六銀以下▽同馬▲同歩▽2八銀▲3八金▽2九銀不成▲3九金▽3八銀打▲4八金▽2八飛成(参考図1)と進んだ局面は、後手の重たい攻めが間に合ってきそうな局面です。

【参考図1:▽2八飛成 まで】

悪いわけではありませんが、後手にだけ攻められる展開は避けたいところです。そこで、図13では2一馬(図14)と攻め合います。当記事の指針からすれば穏やかにおさめる変化を目指したいところですが、この変化に限ってははじめから攻め合いを目指すのがわかりやすいと思います。

【図14:▲2一馬 まで】

図13以下、▽2八馬▲4九金(1)▽2九馬▲1一飛▽6二玉▲3一馬▽同金▲同飛成▽2八飛成▲5八銀▽3八銀▲5四桂(2) が進行例です(図15)

※太字個所は図面以下で解説。

【図15:▲5四桂 まで】

(1):▽2八馬に対しては、後手の攻めを遅らせるために▲4九金とします。

(2):最終手▲5四桂はポイントの一手で、先に▲4二龍▽5二桂としてから▲5四桂だと、取ってくれない可能性があります。

図15以下は、▽同歩▲4二龍▽5二桂▲5三銀▽7二玉▲8六香 が進行例です。(図16)

【図16:▲8六香 まで】

最終手▲8六香と打ったところは、先手が一手勝ち模様です。後手が粘るなら▽7四角のような手が考えられますが、▲8四歩(参考図2)と攻め駒を確実に足していき、先手の攻めは続くでしょう。

【参考図2:▲8四歩 まで】

▲1一角成に▽2五飛の変化 【まとめ】
  • 2五飛は▽3三桂や▽8七銀に比べればマイナーだが要警戒の変化。
  • ▲3六銀の飛車と馬の両取りは手拍子で指すと後手の猛攻に遭う可能性があるので打つ時は注意。
  • 2五飛の変化は攻め合いを目指すのがわかりやすい勝ち方。後手からの攻めは受けきりではなく、受け流す感覚で対応する。

 

以上、横歩取り4五角戦法の主要変化である、▽3三桂、▽8七銀、▽2五飛について見ていきました。サラっと整理するつもりだったのですが、やりだすとなかなかのボリュームになってしまいました。。。整理していて感じたことですが、当記事ではかなり変化を絞ったにも関わらず、それでも後手に選択肢が多い4五角戦法に対して、先手が記憶力だけで勝負するのは圧倒的に不利だと思いました。

記事冒頭でも述べましたが、対局前に4五角戦法と遭遇した時の指針や、手の流れをイメージしておくのが大切だと考えています。それが出来ていれば、いざ実戦で遭遇した時に対応手順を完全に記憶していなくても、それに近いものを導き出せると思います。

繰り返しになりますが、これは決定版の対策ではなく、あくまで一例の対策に過ぎないことはご了承ください。当記事で取り上げた4五角戦法対策の考え方が、もしご自身の棋風や好みにあっていると感じるような考え方であれば、ぜひ実戦で試していただければ幸いです。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!