大人からの将棋上達ブログ

成人後に将棋を本格的に始め、24で六段になった将棋指しの

次の一手問題で上達する技術

将棋には様々な上達方法があります。次の一手問題も上達方法の1つですが、個人的には「詰将棋」「棋譜並べ」「実戦対局」などに比べてややマイナーというか、主要な勉強法にはなっていない印象があります。次の一手問題を解くことはとても効果がある勉強法だと思っているので、今回記事にしてみようと思いました。

 

次の一手問題については、過去の記事でその魅力について書いたことがあります。

syogiblog.hatenadiary.jp

こちらの記事では、次の一手問題が手軽にはじめることができ、また挫折しにくい勉強法であることを自らの経験から記載しています。ただ、具体的にどのような技術の上達に役立つかを記載していませんでした。

そこで今回は次の一手問題を解くことで、棋力向上にどのような効果があるのかについて考察をした内容を記載しています。よければ参考にしてみてください。

 

1.局面やテーマごとの様々な手筋を覚えられる

次の一手の問題に主に取り上げられるのは、様々なテーマに沿った手筋です。代表的なものとしては必死問題があり、必死のかけ方や必死の凌ぎ方など特定のテーマでまとめられたものが有名です。次の一手問題を解くことで、これらの"手筋"と呼ばれる技術を身に着けることができます。

■テーマごとの手筋をまとめた次の一手問題例

 

2.状況判断、意思決定の練習ができる

詰将棋や先述した必死問題などは、事前に指し手の目的が決まっています。例えば詰将棋であれば"詰ます"という目的が決まっており、当たり前ですが詰む前提で問題が作られています。ただし実戦対局では、その前に"どのような目的の手を指せばよいか"という意思決定をする必要があります。

これは終盤における思考プロセスにスポットを当てるとわかりやすいでしょう。まずは以下の図1を見てみてください。

【図1:終盤戦における読みの組み立て フローチャート】

f:id:RitaAme:20180715160648p:plain

これは終盤力養成書として定評のある、金子タカシさんの棋書"凌ぎの手筋200"から抜粋した”終盤の読みの組み立て”について、フローチャートに図式化したものです。

「読みの開始」からスタートして、上から順番に条件判断をしていきます。途中の条件に当てはまるかどうかで進むルートを決めていき、辿り着いた青い四角の部分が終盤における正しい意思決定内容です。この図の通りに正しく状況判断を進めていき、青い四角に記載された内容通りの指し手を実現できれば、終盤で勝てるようになります。

詰将棋であれば「敵玉に詰みがあることが前提」になっています。つまり図1であれば「2.敵玉に詰みがあるか?」の質問にYesと判断された後の話です。必死問題であれば「敵玉に必死がかかることが前提」に問題が構成されています。

このように詰将棋や必死問題では「敵玉に詰みがあるか?」「敵玉に必死がかかるか?」という条件判断は既に終わっています。しかし実戦ではこれらの技術を活用する前に、条件判断をして終盤で何をすべきか意思決定をする、つまりは「フローチャートを辿る技術」が求められてきます。

その練習に役立つのが「指し手の目的が明示されていない次の一手問題」です。以下は当ブログで毎回紹介させていただいている2冊ですが、「序盤・中盤・終盤」と局面ごとにスポットを当てているものの、指し手の目的は事前に明確にされていません。このような次の一手問題であれば、図1のフローチャートを辿る練習をすることができます。

 ■指し手の目的が明示されていない次の一手問題例

例えば「終盤の手筋」 の場合、敵玉を詰ます問題、敵玉に必死をかける問題、自玉の詰みを凌ぐ問題、攻防手を考える問題など、様々な問題がランダムに出題されています。そのため、図1のフローチャートを正しく辿ることができなければ、正しい目的の一手に辿り着くことは出来ないでしょう。

ただし上記の書籍含め、大抵の次の一手問題には、次の一手の目的が記載された「ヒント」が載っています。

そこで個人的に効果があると考えている勉強方法としては、1週目はヒントを見ながら手筋を覚え、2週目はヒントを隠して状況判断と意思決定をするところから考える練習をすれば良いのではないかと思います。

 

まとめると、次の一手問題では以下2点の技術が取得できると考えています。

  1. 様々な手筋の取得
  2. 正しい状況判断能力・意思決定能力の取得

特に2点目の正しい状況判断能力と意思決定能力の取得は、実戦対局以外ではなかなか身に付きにくい技術だと思いますので、次の一手問題を勉強方法に取り入れる価値は大いにあるのではないでしょうか。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!