大人からの将棋上達ブログ

成人後に将棋を本格的に始め、24で六段になった将棋指しの

【次の一手|プロの実戦】問題95-角換わりの終盤戦

プロ棋士の実戦棋譜から、これは凄い!と感じた一手や、覚えておくと棋力向上に繋がりそうな手筋などを、「次の一手」の問題形式で紹介します。問題を解いて棋力アップを目指してください。

今回は以下の棋戦からの紹介です。

▲澤田真吾六段 △郷田真隆九段 第26期 銀河戦 本戦Eブロック 9回戦 より

                            

【問題図:▲8六桂 まで】

いま先手が▲8六桂と打ち、自玉の詰めろを受けたところです。後手の次の一手を考えてみてください。

 (正解は下にスクロールするとあります)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                            

正解は▽2六歩です

【正解図:▽2六歩 まで】

▽2六歩と打つのが正解です。2七にいる飛車が攻防に働いているため、役割をどちらかに制限するよう打診した一手です。

▲同飛と取れば3段目からズレるため自玉への守りの役割が無くなりますし、▲3七飛と3段目で飛車を保つと今度は後手玉への攻めの役割が無くなります。

 

実戦は正解図以下▲2六同飛と取りました。以下▽7八銀不成▲同玉▽7七角成▲同玉▽6七金と進みます。(図1)

【図1:▽6七金 まで】

図1以下は▲8八玉▽7七銀▲9八玉▽8七桂成▲同玉▽8六飛▲9七玉▽8八飛成までの詰みです。実戦は図1の局面で先手の投了となりました。

 

正解図から▲3七飛と逃げるのは、先述の通り後手玉への攻めの働きが無くなるため、後手はゆっくり攻めて問題ないかと思います。一例としては▽7六歩と打つ手があります。(参考図1)

【参考図1:▽7六歩 まで】

参考図1以下は▲同銀▽9九角成▲同玉▽7八銀成という手順が一例です。

 

また、正解図から飛車を逃げずに▲2四歩と攻め合いに行く手は、▽2七歩成で後手が勝勢です。(参考図2)

【参考図2:▽2七歩成 まで】

参考図2から▲2三歩成は▽7八銀不成以下、実戦と同じ進行で詰みです。

そのため先手は▲4一金▽2二玉▲2三歩成と迫りますが、以下▽同玉の局面は後手玉が詰まないため、後手が勝ち筋です。(参考図3)

【参考図3:▽2三同玉 まで】

この問題で現れた▽2六歩のように、終盤は役割を多く担っている駒に対して役割を打診する一手が急所になりやすいです。覚えておくと良いのではないでしょうか。

 

いかがでしたでしょうか?問題の感想などございましたら、コメントをいただければ幸いです。

もしよければ、以下の問題にもチャレンジしてみてください!

【次の一手|プロの実戦】問題94-中飛車の中盤戦

プロ棋士の実戦棋譜から、これは凄い!と感じた一手や、覚えておくと棋力向上に繋がりそうな手筋などを、「次の一手」の問題形式で紹介します。問題を解いて棋力アップを目指してください。

今回は以下の棋戦からの紹介です。

▲宮本広志五段 △東 和男八段 第31期竜王戦6組昇級者決定戦 より

                            

【問題図:▽6八銀 まで】

いま後手が▽6八銀と打ち、飛車を取りにきました。先手は飛車を取らせる代償を求めたいところです。次の一手を考えてみてください。

 (正解は下にスクロールするとあります)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                            

正解は▲6七金です

【正解図:▲6七金 まで】

▽6八銀と打たれた問題図の局面は、先手の飛車の行き場所が無いため、飛車を助けることはできません。先手も飛車を取らせるかわりに何か代償を求めたいところでした。

正解は▲6七金と角取りに金を寄る手です。これは飛車を取らせる代わりに、後手の角を取りに行った一手です。例えば正解図から▽4六角成などとして角を逃げてしまうのは、▲6八金と打ったばかりの銀をタダで取られてしまいます。(参考図1)

【参考図1:▲6八金 まで】

これは後手の駒損が大きく、先手が勝勢です。

そのため、正解図から▽6九銀成と飛車を取るしかありませんが、先手も▲5七金と角を取り返します。(図1)

【図1:▲5七金 まで】

一連の手順で飛車と角の交換になりました。先手が依然駒得であり、陣形差でも上回っているため、先手が優勢な局面だと思います。

また、この手順で先手は使えていなかった▲7七金を、自玉の守りに近い場所(▲5七金)まで移動させることができました。このように、ただ相手の駒を取るだけでなく、守りを固めることもできる一手は一手以上の価値があります。中盤以降は一手で一手以上の価値がある手が発生しやすくなるので、狙っていきたいところです。

 

いかがでしたでしょうか?問題の感想などございましたら、コメントをいただければ幸いです。

もしよければ、以下の問題にもチャレンジしてみてください!

【次の一手|プロの実戦】問題93-角換わりの終盤戦

プロ棋士の実戦棋譜から、これは凄い!と感じた一手や、覚えておくと棋力向上に繋がりそうな手筋などを、「次の一手」の問題形式で紹介します。問題を解いて棋力アップを目指してください。

今回は以下の棋戦からの紹介です。

▲羽生善治竜王 △豊島将之八段 第59期王位戦挑戦者決定戦 より

                                  

【問題図:▲7七歩 まで】

いま先手が▲7七歩と打ったところです。後手の攻めの継続手を考えてみてください。

 (正解は下にスクロールするとあります)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                  

正解は▽7九角です

【正解図:▽7九角 まで】

▽7九角と打つのが鋭い寄せです。これに対して▲同玉と取るのは、▽7七飛成▲7八歩▽6六桂が厳しい手順です。(参考図1)

【参考図1:▽6六桂 まで】

参考図1から▲7七歩と龍を取る手は、▽7八金までの詰みです。受けるなら▲同飛と桂を取るくらいですが、▽同龍となった局面は後手が勝勢です。また途中の▲7八歩に代えて▲6九玉と早逃げするのも、同様に▽6六桂が厳しい攻めになります。

実戦は正解図から角を取らずに▲7八玉と逃げました。対して後手は▽6六桂と打っていきます。(図1)

【図1:▽6六桂 まで】

図1以下、▲6七玉▽7四飛▲同飛▽5八桂成▲同玉▽6八金▲4八玉▽3六歩と進みます(図2)

                

【図2:▽3六歩 まで】

手順途中の▽7四飛と銀を取る手が好手でした。▽7四飛以下▲6二飛成と金を取るのは▽7八銀▲6六玉▽7五金で先手玉が詰んでしまいます。(参考図2)

【参考図2:▽7五金 まで】

問題図ではやや攻めが細い感がありましたが、図2の局面まで進み、後手は攻め駒を増やしながら攻めることができました。図2の局面以下、先手が20手ほど粘りましたが、その後も攻勢を取り攻め続けた後手が勝利しています。正解手▽7九角からの見事な寄せだったと思います。

 

いかがでしたでしょうか?問題の感想などございましたら、コメントをいただければ幸いです。

もしよければ、以下の問題にもチャレンジしてみてください!

【次の一手|プロの実戦】問題92-三間飛車の中盤戦

プロ棋士の実戦棋譜から、これは凄い!と感じた一手や、覚えておくと棋力向上に繋がりそうな手筋などを、「次の一手」の問題形式で紹介します。問題を解いて棋力アップを目指してください。

今回は以下の棋戦からの紹介です。

▲千田翔太四段 △菅井竜也五段 第44期新人王戦2回戦 より

                                  

【問題図:▲3三飛成 まで】

いま先手が3三飛成と、金を取りながら龍を作ったところです。3七の成桂は後手の主張点であるため、守らなければいけません。どのように守りますか。

 (正解は下にスクロールするとあります)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                  

正解は3六角です

【正解図:▽3六角 まで】

居飛車対振り飛車の対抗型においてお互いが大駒を所持している場合、いかに大駒を攻防に効かせ、一手を一手以上の価値にしていくかが中盤以降のポイントです。

正解手の▽3六角が攻防に利かす好手で、3七の成桂を守るだけでなく、次に▽7六桂と攻めていく手を狙っています。実戦は正解図以下▲3一龍に対して、▽7六桂と狙い通りに攻めていきました。(図1)

【図1:▽7六桂 まで】

図1以下、▲同銀は▽5八角成が厳しいため▲9八玉と逃げますが、以下▽5八角成▲同銀▽9五歩と攻めていきます。(図2)

【図2:▽9五歩 まで】

図2の最終手▽9五歩は ”端玉には端歩” の格言通りの攻めです。次に▽9六歩と取り込んだ手が詰めろとなり、見た目以上に厳しい攻めになっています。正解手の▽3六角をきっかけに、後手が攻めの主導権を握る展開にすることができました。

 

ちなみに、問題図から▽3六角に代えて▽3九飛と打つのも自然な一手に見えます。(参考図1)

【参考図1:▽3九飛 まで】

正解図と参考図1の局面を比較し、正解図のほうが勝っていると考えられる点は以下の2点です。

1点目は、お互いの大駒の間に駒がいる場合は、駒がいる側が不利になりやすいというセオリーがあるからです。この場合は▽3七成桂がいる後手に、指し手の制限がかかっています。成桂を横に動かすと飛車が取られてしまいますし、飛車を横に動かすと成桂が取られてしまいます。このような局面を後手は自ら選びたくないところです。

2点目は、正解図は▽7六桂という具体的な狙いがあるのに対し、参考図1は次の狙いがハッキリとしていません。▽1九飛成と香を取るような手では、▲3七龍と桂を取られてしまいます。攻めていくなら結局▽3六角と打ち▽7六桂を狙いにしていくことになるのですが、そうであれば初めから▽3六角と打ったほうが、攻めが一手早いため良いと思います。

 

いかがでしたでしょうか?問題の感想などございましたら、コメントをいただければ幸いです。

もしよければ、以下の問題にもチャレンジしてみてください!


【次の一手|プロの実戦】問題91-横歩取りの中盤戦

プロ棋士の実戦棋譜から、これは凄い!と感じた一手や、覚えておくと棋力向上に繋がりそうな手筋などを、「次の一手」の問題形式で紹介します。問題を解いて棋力アップを目指してください。

今回は以下の棋戦からの紹介です。

▲富岡英作八段 △長岡裕也五段 第90期ヒューリック杯棋聖戦一次予選 より

                  

【問題図:▲6七金 まで】

▲6七金と角取りに金を上がったところです。後手は攻めを継続していきたいところですが、どう指しますか。次の一手を考えてみてください。

 (正解は下にスクロールするとあります)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                      

正解は▽7七角成です

【正解図:▽7七角成 まで】

問題図から▽4四角と逃げるのは、▲7六金と攻めの拠点の歩を払われてしまいます。後手は駒損をしており、ゆっくりしていると先手の駒得が生きやすい展開になるため、手番を生かして一気に攻めていきたいところです。

同じ攻めていくにしても、正解手の▲7七角成に代えて7七歩成とするのは、▲6六金と角を取られた手が飛車取りになってしまい、失敗します。(参考図1)

【参考図1:▲6六金 まで】

そのため▽7七角成と角で行くのが正解です。

正解図以下は、▲同桂▽同歩成▲7六歩▽6七と▲同銀▽7七桂成 と進みます。(図1)

                      

【図1:▽7七桂成 まで】

図1以下▲7五歩と飛車を取るのは、▽6七成桂▲6八金▽6六桂が厳しい攻めになります。(参考図2)

【参考図2:▽6六桂 まで】

実戦は図1から▲5八玉と玉を早逃げしましたが、以下▽2五飛が味の良い一手です。(図2)

【図2:▽2五飛 まで】

▽7七成桂と▽2五飛の力で、先手玉を左右両側から攻めていくことができます。このように相手玉を包み込むように攻めていくのは理想的な攻めです。

図2は後手玉が全くの手付かずであり、先手玉に対する攻めが切れる心配がないため、後手が大優勢の局面だと思います。

 

いかがでしたでしょうか?問題の感想などございましたら、コメントをいただければ幸いです。

もしよければ、以下の問題にもチャレンジしてみてください!

【次の一手|プロの実戦】問題90-矢倉の序盤戦

プロ棋士の実戦棋譜から、これは凄い!と感じた一手や、覚えておくと棋力向上に繋がりそうな手筋などを、「次の一手」の問題形式で紹介します。問題を解いて棋力アップを目指してください。

今回は以下の棋戦からの紹介です。

▲日浦市郎八段 △伊藤沙恵女流二段 第90期ヒューリック杯棋聖戦一次予選 より

 

【問題図:▽2三銀 まで】

いま後手が▽2三銀と上がったところです。先手にとってここはチャンスの局面で、後手陣の隙をついた好手順があります。5手先まで読んでください。

 (正解は下にスクロールするとあります)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正解手順は▲同飛成▽同金▲8三銀▽同飛▲6一角です

【正解図:▲6一角 まで】

問題図から▲同飛成とするのが、後手陣の隙をついた強襲です。▽同金に対して先に▲8三銀と打ち捨ててから▲6一角と打つのが好手順です。

▲8三銀と打たずに単に▲6一角と打つのはどうでしょうか。それには▽5二角と受ける手があります。以下一例の手順として、▲8三銀▽6一角▲8二銀成▽2六飛が予想される進行です。(参考図1)

【参考図1:▽2六飛 まで】

参考図1の局面は、先手の▲8二成銀の活用がまだ見込めていません。最終手▽2六飛以下▲3九金には、▽2八歩という確実な攻めがあり、後手も十分戦える局面だと思います。

 

そのため、実戦の▲8三銀▽同飛を決めてから▲6一角という手順のほうが勝ります。

【正解図:▲6一角 まで(再掲)】

正解図以下は ▽8二飛▲4三角成と進みました。次は▲4二金の一手詰ですし、詰めろを受けられても▲2一馬と桂を取る手があり、先手優勢の局面になりました。(図1)

【図1:▲4三角成 まで】

 

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もしよければ、以下の問題にもチャレンジしてみてください!

 

【次の一手|プロの実戦】問題89-の相掛かりの序盤戦

プロ棋士の実戦棋譜から、これは凄い!と感じた一手や、覚えておくと棋力向上に繋がりそうな手筋などを、「次の一手」の問題形式で紹介します。問題を解いて棋力アップを目指してください。

今回は以下の棋戦からの紹介です。

▲菅井竜也王位 △増田康宏五段 第26期 銀河戦 本戦Fブロック 9回戦 より

 

【問題図:▽7四飛 まで】

先手の▲6六角に対して、▽7四飛と逃げたところです。ここで先手には序盤戦をリードする軽手がありました。次の一手を考えてみてください。

 (正解は下にスクロールするとあります)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            

正解は▲8三歩です

【正解図:▲8三歩 まで】

▲8三歩が▲6六角からの継続手です。飛車を8筋からずらし、▲8二歩成を狙った手順です。

▲8二歩成を防ぐ部分的な受けとしては▽7一金と受けるしかありませんが、それに対しては▲3六飛と指します。(参考図1)

            

【参考図1:▲3六飛 まで】

参考図1から▽3五歩は▲同飛▽3四歩▲8五飛と飛車をダイナミックに転換して、次の▲8二歩成を見せて先手が優勢です。(参考図2)

【参考図2:▲8五飛 まで】

また参考図1から▽5四角と打つ手には、▲4六飛と戻っておきます。(参考図3)

【参考図3:▲4六飛 まで】

4段目に角を打ったため、後手の7四の飛車の横効きがとまりました。次に▲3四歩と桂頭を攻めていく手が生じています。参考図3以下で飛車の横効きを通す▽7六角には、▲7五歩▽8四飛▲3四歩▽同飛▲3三角成▽同銀▲7六飛が一例の進行です。(参考図4)

【参考図4:▲7六飛 まで】

▲3三角成から角を素抜く手順があり、先手が桂得になりました。参考図4は後手の▽7一金が壁型になっており、陣形差も含めて先手優勢の局面です。

 

実戦では正解図から▽同銀としましたが、▲8二歩と打っていきます。(図1)

【図1:8二歩 まで】

図1以下は▽9三桂▲8一歩成▽8四銀▲9一と と進みました。先手が駒得をすることに成功し、序盤戦をリードしました。

 

いかがでしたでしょうか?問題の感想などございましたら、コメントをいただければ幸いです。

もしよければ、以下の問題にもチャレンジしてみてください!

【次の一手|プロの実戦】問題88-雁木の中盤戦

プロ棋士の実戦棋譜から、これは凄い!と感じた一手や、覚えておくと棋力向上に繋がりそうな手筋などを、「次の一手」の問題形式で紹介します。問題を解いて棋力アップを目指してください。

今回は以下の棋戦からの紹介です。

▲増田康宏六段 △三枚堂達也六段 第31期竜王戦4組ランキング戦 決勝 より

 

【問題図:▽4五歩 まで】

いま後手が▽4五歩と角取りに歩を打ったところです。先手は角を逃げるか、他の手を指すか。先手の次の一手を考えてみてください。

 (正解は下にスクロールするとあります)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正解は▲4四歩です

【正解図:▲4四歩 まで】

問題図から角を逃げる▲2八角は▽3六飛と走られ、次の▽3八飛成が受けにくい形です。(参考図1)

【参考図1:▽3六飛 まで】

参考図1から▲3七歩と飛車成りを受けるのは▽2六飛と回られてしまいます。これは後手優勢の展開です。

 

先手は角を逃げても状況が悪化するため、角を取らせる代償に他の利益を求める手を考えたいところです。その一手が正解の▲4四歩です。

【正解図:▲4四歩 (再掲)】

正解図以下、▽5五桂と銀を取るのは▲同角と取り、手順に角を逃げながら桂を取り返すことができます。(参考図2)

【参考図2:▲5五同角 まで】

この手順は、直前に打った▽4五歩の一手の価値が失われてしまうため、後手としては選びたくない手順です。参考図2は先手から次に▲7四歩や▲4三歩成といった具体的な狙いが複数あり、実際の形勢としても先手が優勢な局面です。

 

実戦は正解図以下、▽4六歩▲4三歩成▽同金上▲3五桂と進みます。(図1)

【図1:▲3五桂 まで】

後手は桂を逃げずに駒を取り合う順が自然な進行で、実戦もそう進みました。図1の最終手▲3五桂が、飛車を走る手を受けながら▲4三桂成を狙った攻防手です。

図1は後手が若干の駒得ですが、先手は後手玉に比べると相対的にしっかりしていますし、次に▲7四歩という厳しい狙いもあるので、先手に楽しみが多い局面ではないかと思います。

 

 

いかがでしたでしょうか?問題の感想などございましたら、コメントをいただければ幸いです。

もしよければ、以下の問題にもチャレンジしてみてください!

【次の一手|プロの実戦】問題87-中飛車の中盤戦

プロ棋士の実戦棋譜から、これは凄い!と感じた一手や、覚えておくと棋力向上に繋がりそうな手筋などを、「次の一手」の問題形式で紹介します。問題を解いて棋力アップを目指してください。

今回は以下の棋戦からの紹介です。

▲里見香奈女流王位 △渡部 愛女流二段 第29期女流王位戦五番勝負 第3局 より

 

【問題図:▲7七角 まで】

いま先手が▲7七角と上がりました。4五の桂が取られる手を角の効きで防いだところです。後手の次の一手を考えてみてください。

 (正解は下にスクロールするとあります)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

          

正解は▽6六金です

【正解図:▽6六金 まで】

問題図では次に▲4四角を狙っていました。例えば問題図から▲4四角を防がずに▽2二銀とすると、▲4四角と出られて先手が優勢です。(参考図1)

【参考図1:▲4四角 まで】

後手は▲4四角を阻止する手を考えたい局面でした。

 

正解手の▽6六金は、働きの弱い金を犠牲にして角筋を防ぐ一手です。

正解図から▲同角は▽7九飛成と飛車を取られてしまうため、▲同歩の一手ですが、そこで▽4五歩と取り込みます。(図1)

 【図1:▽4五歩 まで】

後手は一連のやり取りで駒損をしましたが、盤上の角と飛車の効きが存分に生かされる展開になってきました。一方で先手は、後手に比べて角と飛車の働きが非常に悪いため、先手が駒得ながら駒の効率差で後手ペースの局面ではないかと思います。

また正解図の局面において7筋の駒の配置に注目をすると、お互いの飛車の間に先手の駒が挟まっている(▲7七角)ことがわかります。お互いの大駒の間に駒がある場合、駒がある側が不利になりやすいというのがセオリーです

この場合だと、間にいる角を動かすと飛車が取られてしまいますし、飛車を動かしてしまうと間にいる角が取られてしまいます。間に駒があると動かす駒に制限がかかるため、不利になりやすいのです。

正解手の▽6六金は、上記のセオリー通りの局面を人為的に作り出した好手だったと思います。

 

いかがでしたでしょうか?問題の感想などございましたら、コメントをいただければ幸いです。

もしよければ、以下の問題にもチャレンジしてみてください!

 

【次の一手|プロの実戦】問題86-横歩取りの終盤戦

プロ棋士の実戦棋譜から、これは凄い!と感じた一手や、覚えておくと棋力向上に繋がりそうな手筋などを、「次の一手」の問題形式で紹介します。問題を解いて棋力アップを目指してください。

今回は以下の棋戦からの紹介です。

▲羽生善治竜王 △佐藤天彦名人 第76期名人戦七番勝負第5局 より

 

【問題図:▲4一飛 まで】

いま先手が▲4一飛と打ったところです。形勢は金銀を合計7枚所持している後手が優勢ですが、次の▲4四角だけは防がなければいけないところです。後手はどのように受けますか。

 (正解は下にスクロールするとあります)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        

正解は▽4三桂です

【正解図:▽4三桂 まで】

問題図の局面から、最もやってはいけないのは▽4二金という受け方で、▲5四歩と打たれると局面が一気に紛れます。また、いきなり▽5七銀と詰ましにいくのはまだ詰みません。正確には、後手の持ち駒に「角」が追加されれば詰むという状況です。

正解は▽4三桂と打つ手で、その角を狙いながら▲4四角を防いだ一手です。先手は角を取られると詰めろになってしまうので▲2四角と逃げたいところですが、それには▽3一金打として飛車を捕まえます。(参考図1)

【参考図1:▽3一金打 まで】

飛車を捕獲されてしまうと、先手は有効な攻めが無くなってしまいます。参考図1は後手陣が鉄壁で、後手勝勢の局面です。

 

実戦は正解図以下、▲3三歩成▽3五桂▲3二と▽5七銀(図1)と進みました。

【図1:▽5七銀 まで】

この▽5七銀で先手の投了となりました。後手は▽3五桂で角を持ち駒に加えたため、図1以下は即詰みがあります。図1以下の手順は、▲6九玉▽6八金▲同金▽同銀成▲同玉▽5七銀▲7八玉▽6九銀▲7七玉▽6八角▲8八玉▽7九角成▲7七玉▽6八馬(参考図2)というのが一例の手順です。

【参考図2:▽6八馬 まで】

参考図2以下は▲8八玉▽7八銀成▲9八玉▽8八金でピッタリの詰みです。

▽3五桂と角を取った手がちょうど詰めろになるという、完璧な終盤の組み立てでした。

 

いかがでしたでしょうか?問題の感想などございましたら、コメントをいただければ幸いです。

もしよければ、以下の問題にもチャレンジしてみてください!

 

【次の一手|プロの実戦】問題85-中飛車の中盤戦

プロ棋士の実戦棋譜から、これは凄い!と感じた一手や、覚えておくと棋力向上に繋がりそうな手筋などを、「次の一手」の問題形式で紹介します。問題を解いて棋力アップを目指してください。

今回は以下の棋戦からの紹介です。

▲長沼 洋七段 △千田翔太六段 第31期竜王戦5組昇級者決定戦 より

 

【問題図:▲7一飛 まで】

いま先手が▲7一飛と打ったところです。後手はどのような方針で指せば良いでしょうか。次の一手を考えてみてください。

 (正解は下にスクロールするとあります)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正解は▽9二角です

【正解図:▽9二角 まで】

問題図における後手の主張は、駒得をしていることです。この後、先手に▲8一飛成~▲9一龍と桂香を拾われてしまうと、後手の主張点が無くなってしまい、玉の堅さで上回る先手が優勢になります。そのため、問題図では▲8一飛成を防ぐ手を考えたいところです。

正解手の▽9二角は▲8一飛成を防ぎながら、先手陣に狙いをつけた攻防手です。角を手放すようで勿体ないと感じるかもしれませんが、この香の上に角を打つ手は"遠見の角"と呼ばれる手筋です。離れた場所に設置した角の効きは防ぎにくく、後々攻めに効いてきやすい一手です。この場合は8一の桂を守るという問題図における課題もクリアできるため、遠見の角を打つ絶好のタイミングと言えるでしょう。

この▽9二角は、直接的には先手の3八の銀に狙いをつけています。ただそれだけではなく、当然9二~3八までの途中の地点にも角の効きがあります。その具体的な効果として、先手の▲5六銀という攻めを防げているのが大きなところです。攻め駒不足である先手の攻め筋を制限しています。

 

正解手以外で▲8一飛成を防ぐ手としては▽4五馬とするのも自然な手ですが、それには先述の▲5六銀という攻め筋があります。以下▽6三馬▲5五銀と進むと、攻め駒不足だった先手の攻め筋が広がっていて、後手としても嫌な流れではないでしょうか。(参考図1)

【参考図1:▲5五銀 まで】

正解手の▽9二角が果たしている役割の大きさがわかります。遠見の角の実戦例として、覚えておくと良いのではないでしょうか。

 

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アイ・メッセージ 将棋上達のコミュニケーションモデル

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将棋の対局中に、対局者どうしが言葉でコミュニケーションをすることは、対局前後の定められたものを除き、基本的にはありません。

ですが、対局後の検討や将棋の指導、研究など様々なシーンにおいて、言葉によるコミュニケーションが発生するのが将棋というゲームです。

コミュニケーションをどのようにするか、特に、強い人が指導する立場に立った時、どのような言葉でコミュニケーションするかは、指導を受ける人の将棋の上達において重要なことだと考えています。

 

今回は将棋指しのコミュニケーションのあり方について、考えてみました。

 

【目次:アイ・メッセージ 将棋上達のコミュニケーションモデル】

 


1.アイ・メッセージ と ユー・メッセージ

早速ですが、以下2種類の例文をみてください。(対局後の感想戦でのやり取り)

① なぜそう指したのかな。ここはこう指すべきでしょ?

② ここでこういう手が指せるようになると、良いと思うよ。

 もう1つ、例を出します。

① 今回の反省を生かして、ちゃんと序盤の勉強しなきゃダメだよ。

② 今回の反省を生かして、序盤の勉強をすると良いと思うよ。

①の文は「あなた」が主語のメッセージです。このようなメッセージは「ユー・メッセージ」と呼ばれています。悪手を指した相手「あなた」を主語にしてメッセージが組み立てられているのがわかります。

ユー・メッセージの特徴として、「指示的」「命令的」になりやすいところがあります。上から目線で、どこか高圧的な印象を受けるのではないでしょうか。

 

②の文は「わたし」が主語のメッセージです。このようなメッセージは「アイ・メッセージ」と呼ばれています。①とは違って、伝えているのはあくまで「わたし」の考えや気持ちだけで、相手に指示もしていなければ命令もしていません。

アイ・メッセージの特徴は、あくまでメッセージを伝えるに留まっており、それに対して相手がどう感じ、どう行動するかは自由だということです。相手の自由を尊重したコミュニケーションモデルだと言えます。

 

将棋を教える時、この相手の自由を尊重するという視点は忘れてはならないものです。将棋は多様性が魅力のゲームです。どの戦型を指すか、どんな棋風で指すかといった将棋の内容はもちろんですが、「どうやって上達していくか」という上達のプロセスもプレイヤーに選ぶ権利があります。それを意図せず侵略してしまう行為が「ユー・メッセージ」によるコミュニケーションではないかと考えています。 

 


2.指示的な言葉は将棋をやめさせる原因にもなる

人は相手に何かを伝える場合、「あなた」を主語にしたメッセージを使ってしまいがちです。ですが、このコミュニケーションモデルが一般化すると、多くの人の上達の機会を阻むことになるのではないかと考えています。

 

将棋には段位という階級があることもあり、強さの序列がはっきりとしやすいゲームです。指示的なメッセージを使うと、将棋では強い人の言うことには従わなければならない、という空気感が生まれます。そのような環境においては、格上の相手に対して自分の考えを何も主張することができなくなってしまいます。

将棋において、自分の思考プロセスをアウトプットすることは欠かせない上達法です。指示的・命令的なコミュニケーションはその上達法を奪ってしまうことになりかねません。

 

また真面目な性格な人の場合、「強い人の指示通りにやっているのに強くなれないのは、自分に才能が無いからだ」と捉え、最悪の場合は将棋が楽しくなくなって、辞めてしまう原因にもなり得ます。僕も「ユー・メッセージ」による指導を受けた時、辞めはしませんでしたが勉強が停滞してしまった時期が何度もあります。

僕は大学の将棋部に入部時、それまでほぼ将棋の勉強をしたことが無かったため、基礎が全く出来ていませんでした。そのため改善すべきところがたくさんあり、たくさんの方から様々な指摘を受けてきましたが、やはり「アイ・メッセージ」で伝えられたほうが良い行動に繋がったのを覚えています。

 


3.言葉はその人の人格を作る

アイ・メッセージを使うことは、指導する側にも良い影響があると思います。言葉は人格を作るとは、よく言われることです。

これは科学的にも証明されていることで、相手に向けて発した言葉は、自分の耳にフィードバックして入っていきます。このフィードバックを受けて、脳が「自分はこういう風に考えているんだな」と認識します。

 「ユー・メッセージ」を使っていると、その人が自分より強い相手と対局した時、今度は自分が検討で何も主張できなくなってしまいます。普段から発している自分自身のメッセージが、自らの成長の機会を奪っているのではないでしょうか。

 

これまでに何度か超強豪と呼ばれる人達から教わったことがありますが、検討では「わたし」というニュアンスの言葉を含んでいらっしゃる方が多いです。本当に強い方は、指導をしていく中でも良質な人格を形成していき、強くなっていっているのではないかと感じます。

 


4.アイ・メッセージによるコミュニケーションのススメ

これまで述べてきたように、将棋指しの人達には「わたし」を主語にした「アイ・メッセージ」を使ってほしいなと思っています。

 

「アイ・メッセージ」は、心理学やコーチングの書籍を眺めていると見かけるコミュニケーションのモデルです。最近、本業では部下を持つ立場になり、部下とのコミュニケーションについて考える機会が増えたことも、このようなコミュニケーションのモデルについて知ったきっかけです。

 

将棋においても、このようなコミュニケーションのモデルを知っておくことは、指導する時はもちろん、自分自身の将棋の上達にも良い影響があると考えています。

ある程度まとまりのあるコミュニティ(将棋サークル・将棋部など)で全体のレベルアップを考える時、最も見直すべき観点はコミュニケーション・モデルかもしれません。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。